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映画『ディア・ファミリー』福本莉子インタビュー

どや!

writer:華崎 陽子
photo:杉 映貴子

「信じることと諦めないことがすごく大事だと改めて感じました」
娘のために人工心臓の開発に挑んだ家族の実話を大泉洋主演で映画化
映画『ディア・ファミリー』福本莉子インタビュー

2016年の「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞し、『思い、思われ、ふり、ふられ』や『今夜、世界からこの恋が消えても』などで、透明感のある佇まいと確かな演技力で輝きを放つ福本莉子。そんな福本が、6月14日(金)より、大阪ステーションシティシネマほか全国にて公開される『ディア・ファミリー』に出演している。

ノンフィクション作家・清武英利の著書『アトムの心臓「ディア・ファミリー」23年間の記録』を基に、『君の膵臓をたべたい』の月川翔監督が映画化した人間ドラマ。知識も経験もない町工場を経営する父親が生来の心臓疾患で余命10年を宣告された次女・佳美の未来を変えるために、家族に支えられながら人工心臓の開発に取り組み、やがてIABPバルーンカテーテルを作り出し、医療界を動かす様を描く。

大泉洋が主人公の坪井宣政を演じ、妻・陽子を菅野美穂、3姉妹を支える長女を川栄李奈、次女・佳美を福本莉子、三女を新井美羽が演じるほか、有村架純、松村北斗、光石研らが共演している。そんな本作の公開に合わせ、心臓疾患を抱えながらも強く生きる佳美に扮した福本莉子が作品について語った。


──最初に脚本を読んだ時は、どのように感じられましたか。

まず脚本を読んで、このお話が実話だということにすごく驚きました。IABPバルーンカテーテルがどうやって誕生したのかを初めて知って、その裏にあった素晴らしい家族の物語と合わせて、とにかく驚きました。

──福本さんが演じられた佳美さんという役については、どのように感じられましたか。

生まれた時から心臓に疾患があり、余命を宣告されていてもいつも前向きで。生きることを諦めない、すごく強い女性だと思いました。佳美さんのことは、ご家族の方からどんな風に生活していたのかや台本に書かれていない家族の思い出をたくさん聞かせていただいて、自分の中でイメージを膨らませていきました。

──佳美さんが、子どもから高校生になっていく過程がすごくスムーズでした。佳美さんを演じるに当たって意識したことはありましたか。

私は高校生の佳美さんから演じることになっていたので、自然に見えるように意識しました。私が撮影に参加していなかった、佳美さんが幼い時の家族の様子を撮影した映像を見せていただいて、家族の雰囲気を思い描きながら撮影に臨みました。それに加えて、作品に入る前に佳美さんの子ども時代を演じる女の子と一緒に、佳美さんの話すスピードやトーンを調節しました。

──福本さんが2022年に出演された『今夜、世界からこの恋が消えても』の脚本を書かれていた月川翔さんが本作の監督を務めていますが、監督と役者として対峙されていかがでしたか。

月川監督とは2018年に公開された『センセイ君主』で初めてご一緒させていただきました。あの時は、この世界に入ってすぐ、17歳だったと思います。だから今回は、成長した姿を見せたいという思いはありました。

──久しぶりの月川監督の演出はいかがでしたか。

良い意味でお変わりなくて。優しい監督でした。私に寄り添ってくださり、私が欲しい答えや求めているものをちゃんと教えてくださって。かと言って、こうしてほしい、ああしてほしいとおっしゃるのではなく、見守ってくださる。すごく居心地のいい雰囲気の中で撮影できました。

──月川監督が「福本さんが、佳美さんとしてすごく自然に周りに影響を与えてくれていた」とおっしゃっていましたが、家族の中での佳美さんの存在についてどのように考えて演じてらっしゃいましたか。

ご家族の方にお話を聞いた時に「佳美さんが一家の太陽だった」とおっしゃっていて。その、太陽というワードはすごく大事にしていました。佳美さんが家族の原動力となって、みんなを動かしていくような存在になればと思いながら演じていました。

──大泉洋さん、菅野美穂さん演じる両親と娘として接してみて、いかがでしたか。

おふたりは共演が初めてだとお聞きしたんですが、すごく一生懸命で熱い大泉さん演じるお父さんと、家族を温かく見守って包み込んでくれるような菅野さん演じるお母さんは、初共演とは思えないぐらい息ぴったりのご夫婦でした。

撮影以外の時でも、大泉さんも菅野さんもすごく気さくに話しかけてくださって。いつも笑いの絶えない、菅野さんの明るい笑い声に包まれた現場でした。

──3姉妹を演じた川栄さんと新井さんとは、すごく仲が良さそうに見えましたが、姉妹を演じるにあたって、どのようにコミュニケーションを取られたのでしょうか。

川栄さんとは2回目の共演だったので、すんなり姉妹の関係に入れました。(新井)美羽ちゃんとは初めてでしたが、たくさんお話しするうちにいつの間にか仲良くなっていた気がします。

──自然に姉妹になっていけた、と。

そうですね。川栄さんは何でも話せるような、頼りがいのあるお姉ちゃん感があって。川栄さんにぴったりの役でした。美羽ちゃんは本当に可愛くて、何でも頼ってくれるような妹ちゃんでした。

──予告編にも使われている、佳美さんがお父さんに「私の命はいいから」と言うシーンを、福本さんがクランクインしてすぐの段階で撮影したとお聞きしました。

大泉さんたちは佳美さんの子ども時代を先に撮っていたので、私は途中から撮影に参加しました。私の初日が家族写真を撮るシーンで、初日とは思えないぐらい和気あいあいとしていて、楽しい撮影になったのを覚えています。その後、あのシーンを撮ったのですが、確かに私が撮影に入ってすぐだったと思います。

──結果的には、最初の方で撮影できて良かったという気持ちでしょうか。

最初の方にあのシーンを撮ったからこそ、その後の家族のシーンもすんなりと撮影できたのかもしれません。あのシーンは、それまでお父さんが人工心臓を作ろうとして奔走して、でもダメで、あの言葉があるから次に進めるという大事なシーンだったので、それまでのお父さんを佳美として想像しながら演じました。でも、あのシーンはどのタイミングでやっても難しかったと思います。

──この作品は、1日1日を大事に生きることなど、いろんなことを考えさせられる映画でしたが、福本さんは本作を観て、どのように感じられましたか。

諦めないことの大事さを感じました。でも、それはきっと誰かの支えがないとできないと思います。家族の支えがあったから佳美さんも前向きでいられたし、お父さんも、バルーンカテーテルを作って、今も17万人以上の方の命を救い続けていて。ひとりでは絶対に成し遂げられなかったようなことを成し遂げられています。信じること、そして諦めないことはすごく大事だと改めて感じました。

──福本さんは大阪府出身ですが、大阪での思い出やよく行った場所を教えていただけますでしょうか。大阪ステーションシティの施設に行かれたことはありますか?

大阪ステーションシティというのはどこからどこまでですか?

──ルクア大阪や大丸梅田店をはじめとして…、JR大阪駅の駅ビル全体ですね。

よく行ってました(笑)。

──ほんとですか?

梅田が通学路だったので、友達がルクアのカフェでバイトをしていて、高校生の時はルクアのカフェで勉強したこともありました。大阪ステーションシティシネマに映画を観に行ったこともあります。

──大阪ステーションシティが馴染みの場所だったんですね。

そうですね。ほぼ毎日梅田で遊んでました(笑)。

──馴染みのある場所でご自身が出演している映画が上映されるのは嬉しいですよね。

やっぱり嬉しいですね。大阪に住んでいた頃は、ひとりで映画館に様子を見に行ってました(笑)。

大阪ステーションシティシネマ支配人からのコメント

大量の涙を流しました。喪失を嘆く涙ではなく、多くの命を救う事になった偉業とその原動力となった家族愛の尊さに対して溢れ出たものでした。
ハッピーエンドでもバッドエンドでも無い実際のお話。
それなのに溢れ出てくる説明不可能な涙は、それぞれの家族の思い出によって違った理由で流れてくるものだと思います。
見終わった後の温かい気持ちを、是非大切な人と語り合って下さい。

Movie Data

『ディア・ファミリー』

▼6月14日(金)より、大阪ステーションシティシネマほか全国にて公開

出演:大泉洋 菅野美穂 福本莉子 新井美羽 上杉柊平 徳永えり ・ 満島真之介 戸田菜穂 
川栄李奈 / 有村架純 ・ 松村北斗 光石研
原作:清武英利「アトムの心臓『ディア・ファミリー』23年間の記録」(文春文庫)
脚本:林民夫
監督:月川翔

(C) 2024「ディア・ファミリー」製作委員会

Profile

福本莉子

ふくもと・りこ●2000年11月25日生まれ、大阪府出身。2016年開催の第8回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリ、集英社(Seventeen)賞を併せて受賞し、芸能界デビューを果たす。2018年5月に『のみとり侍』でスクリーンデビュー、同年6月上演の舞台ミュージカル『魔女の宅急便』で初舞台にして初主演を務めた。『思い、思われ、ふり、ふられ』(2020)では、中心人物の一人としてカルテット主演を務め、これが映画初主演となり、翌年2021年公開の『しあわせのマスカット』で映画単独初主演を飾った。2022年は、『君が落とした青空』、『20歳のソウル』、『今夜、世界からこの恋が消えても』にメインキャストとして出演。その他の出演作に、TVドラマ「トリリオンゲーム」や「ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~」など。