サウナとは違う、温冷浴の「仕上がる」とは?銭湯を愛しすぎて365日皆勤…温浴施設愛好家・桶美さんの湯道【ハイパー偏愛図鑑 Vol.04】
どや!
今回の偏愛者
桶美(おけび)
1976年生まれ、大阪在住。365日銭湯に通う温浴施設愛好家。温冷浴伝道師。銭湯文化を盛り上げるためのチーム「フルタイム風呂タイム」や、風呂をテーマにした音楽レーベル「桶 MUSIC FACTORY」を主宰している。
\ドヤ/
酒の付き合いより、裸の付き合い。銭湯が好きすぎて年間500回温浴施設通い
──温浴施設愛好家としての活動歴を教えてください。
桶美さん:毎日通うようになって10年くらいかな。いつ誰とどこの銭湯に行ったかスマホのメモ帳に記録してるんやけど、それが2014年から続いてる。でも、その前から週に1〜2回は行ってたんです。なんなら子どもの頃からよく近所の銭湯行っとったし。何かがきっかけで急に銭湯に行くようになったわけやなくて、元々銭湯が好きで、だんだんエスカレートしていった感じ。ここ数年は年間500回くらい行ってます。
──500回!! 1日に何回も銭湯に行くってことですよね。家のお風呂には入らないんでしょうか?
桶美さん:家の風呂はほぼ入らんね。たまにシャワーを使うくらい。遠征したときは1日に何軒も行くし、2日で17軒回ったこともある。まあ、普段から風呂入ってメシ食ってまた風呂……って感じで同じ銭湯に2回行ったり、友達から電話かかってきて風呂誘われたら2軒目で合流したり。居酒屋ハシゴする感覚で風呂ハシゴしてますわ。友達との待ち合わせが大体風呂なんです。
──なるほど、友達との交流の場でもあるんですね。
桶美さん:実は僕、酒が飲めないんですよ。だからいつも車移動。車だと駅から遠いとこも行けるし、帰り道で身体冷えたりしないし、風呂仲間にとっても便利な存在。で、乗せてやったやつらは車ん中で缶ビール飲んだりしよる。ずるいやろ(笑)。まあ、いいように使われてるようで、こっちも沼に引きずり込んでるんで。僕は風呂だけで十分気持ちいいし楽しい。酒の付き合いやなくて、毎日誰かしらと裸の付き合いしてますわ。
──めちゃくちゃ健康的な付き合いですね……。ちなみに、桶美さんの風呂上がりドリンクは?
桶美さん:水か大山乳業のカフェオレ。酒も飲めないけど、昔からコーヒーも受け付けなくて。でもコーヒー味は好きなんですよ。こういうカフェオレなら飲めるんで、風呂上がりは大体これですね。水は奈良の天川村から汲んできた天然水を飲んでます。
桶美さん:風呂上がりに食べるのはラーメンとか中華が多いかな。塩分を欲しますね。末広温泉の後やと「支那そば味平」によく行きます。スパイス系は苦手なんです。スパイスカレーとか食べられへん。アルコールやカフェインやスパイスの効果を、風呂で満たしてるところがあるんやろな。あと、酒は飲まないけど立ち飲み屋とか焼き鳥屋も好きでよく行きますね。
\ドヤ/
「サウナは抜くもの、温冷浴は入れるもの」ととのう……ではなく、仕上がりが違う
──好きとはいえ10年間毎日通うって尋常じゃないと思うんですが、毎日通い続けるモチベーションは一体どこから……?
桶美さん:単純に気持ちいいから毎日行きたいだけなんやけど……。あとは、温浴施設がなくなったら困るから行く人を増やしたいって理由もある。銭湯の効果は家では体感できへんやろ。広さもお湯の量も違うし、温度や水質の違いもあるし。
特にここ末広温泉は、最高の「西式温冷浴」※ができるように、主湯は常時45℃、水風呂は天然地下水の掛け流しで19℃をキープしとって、店主の本気度がちゃうんですよ。こんな銭湯はなかなかない。銭湯に対して本気のスイッチ入ったのは間違いなく末広温泉のせいですわ。
※西式温冷浴は、医学者・西勝造が1927年に提唱した「西式健康法」の療法のひとつ。温浴と冷浴を交互に繰り返して血液の循環をよくし、自然治癒力を引き出すことで身体を健康にするとされている。
──銭湯の本気を見て、愛が加速したと……。それほど温冷浴が気持ちいいってことですよね。
桶美さん:末広温泉を知る前から、温冷浴っぽいことはしてたんです。サウナの後に水風呂に入るとか、熱い湯船と水風呂を交互に繰り返しては「温冷咲き乱れ〜」とか言うて。ちゃんとした作法を知らんまま、なんとなく気持ちいいからやってた。
初めて末広温泉に行ったのが10年くらい前。最初は「なんやこれ、熱すぎやろ!」って反応やった(笑)。でも、一緒に行った風呂仲間から「やっぱりあそこええで」って言われて、何回か行くうちにどんどん気持ちよくなって……。一度その気持ちよさを知ったらやめらんなくなる。ハマりすぎて末広温泉の近所に引っ越してきたやつもおるわ(笑)
──温冷浴でも「サウナでととのう」みたいな状態になるんでしょうか?
桶美さん:僕は「ととのう」って言葉は使ってなくて、「仕上がる」って感覚なんやけど、サウナと温冷浴の仕上がりはちゃいますね。ランナーズハイみたいなトランス状態になるのは似てるけど、温冷浴は頭からスコーンと抜ける気持ちよさがあって、サウナはジワジワ目にくる感じ。
──似たような効果はあるけど、仕上がりが違うと。
桶美さん:温もり方も微妙に違うんですよ。温冷浴は直接お湯に入ることで温熱と同時に水圧の効果があるから、全身が短時間で温もる。サウナは顔が熱くなって、腹とか足の先がなかなか温もらないやろ。温もるって意味でもっと持続性が高いのは塩化物泉とかの温泉やけど。サウナは汗かいてスッキリする気持ち良さもあるし、それぞれ使い分けて入ったらいいと思いますよ。水質によっても仕上がりが違うから面白いんです。個人的に、サウナは抜くもの、温冷浴は入れるものやと思ってます。
※個人の感想であり、お風呂やサウナの効果・効能については諸説あります
\ドヤ/
どんなに冷たくてもやさしく包まれる……最高の水風呂とは?
──水質の違いって体感でわかるものなんですか?
桶美さん:水質のいい水風呂に入ると、どんなに冷たくてもフワ〜っとやさしく包まれる感じで、冷たくてピリピリするような刺激がないんよ。肌にダメージがなくて、水風呂から上がった時の爽快感も格別。水道水と天然の地下水の違いは誰でもわかると思うけど、地下水同士の違いってあんまわからんでしょ。地下水だからなんでもいいってわけやなくて、微妙な違いがある。
──硬水か軟水かの違いもあるんでしょうか?
桶美さん:肌にいいのは軟水と言われているけど、硬水に比べて余計な成分が入ってないことが重要なんちゃうかな※。温泉だと効能が強いかわりに湯あたりの心配もある。実際、温泉を何軒もハシゴすると湯あたり起こすんで、そういう時は一旦普通のスーパー銭湯のサウナを間に挟んで、温泉の成分を全部身体から抜くようにしてます。何しに温泉に行ってるんやってなるけど(笑)。あ、危険なので真似はしないでください。
※硬水は軟水に比べてカルシウムとマグネシウムが多く含まれている
──酔っ払いがリバースしてリセットしてまた酒飲む……みたいなやつじゃないですか。末広温泉以外で、おすすめの銭湯を教えてください。
桶美さん:温冷浴ができて天然水の水風呂があるところだと、末広温泉の弟子で西式温冷浴を推奨してる池田の「五月湯」とか、天満の「楽天地温泉」とか。千林の「神徳温泉」は軟水装置を使ってシャワーのお湯も全部軟水にしてあるんですけど、広くて設備の充実度がヤバいっす。
堺の「トキワ温泉」も人気だったけど、昨年6月に温泉井戸が故障して、ずっと休業中なんですよ……。あと、銭湯やないけど、温冷浴スポットとしては八尾にある天然温泉の「八尾グランドホテル」も有名。水曜なら朝風呂が600円で入れます(2024年1月現在)。
──有益な情報ありがとうございます……!
桶美さん:ただ、塩素消毒された水道水のよさもあるんよ。キンキンに痛む感じを逆に楽しむというか……。「ここは水質がよくない」とか「ここは温度低いからアカン」みたいなこと言う評論家にはなりたくないですね。温度低めだったら長めに入ればいいし、どんな銭湯でも気持ちよくなれるのがプロやと思ってます。
\ドヤ/
「フルタイム風呂タイム」のタオルは週4回以上銭湯に行ってる証
──桶美さんの銭湯アイテムを教えてください。
桶美さん:特別なアイテムは特になくて、石鹸、シャンプー、トリートメント、洗顔フォーム、歯ブラシ、歯磨き粉、カミソリ、タオルって感じやね。携帯用のちっちゃいのやなくて、車に常にこれ積んでます。ハシゴすることも多いんでタオルは常に3〜4枚。シャンプーとトリートメントは「LebeL(ルベル)」のナチュラルヘアソープで、石鹸もけっこう高いナチュラルソープ使ってます。
──偏見で申し訳ないんですが……意外です(笑)
桶美さん:石鹸はもらいもんやけどね。水質にこだわってるのに肌に悪そうなケミカルな石鹸使ってたら、せっかくの天然水の効果も台無しになるやろ。水質にこだわってる銭湯は、無添加石鹸の使用を推奨してたりするんですよ。
──確かに……。タオルもこだわりがありそうですね。
桶美さん:気に入ってるのは「SLICK COTTON CLUB」のバスタオル。泉州地域の伝統的な製法に特別な撚糸(ねんし) を使って作られてるタオルで、ちょっと高いけど肌触りが最高なんです。あと、風呂仲間の牧田耕平くんがやってるアパレルブランド「THE UNION」が出してる、銭湯フリークのためのコレクション「THE UNIIN(湯にイン)」のNEW-YOKUタオル。これ、めちゃくちゃ売れて、周りがみんな持ってるからチーム感出ていい感じです……。
桶美さん:「フルタイム風呂タイム」のタオルは、銭湯に週4回以上行ってる人を見つけたら配ってたやつ。このタオル持ってるやつは、僕らが認めた信頼できる風呂フリーク。「フルタイム風呂タイム」は、耕平くんと一緒に銭湯文化を盛り上げるために立ち上げたチームで、他にもカレンダー作ったり、イベントやったりしてましたね。
\ドヤ/
山口百恵のように桶を床に置いて引退表明……今後の活動と銭湯のこれから
──銭湯愛が深すぎて……いつ仕事してるんですか? ってくらい銭湯中心の生活じゃないですか。
桶美さん:うん、僕ほど仕事サボってるやつおらんと思うで。自分で事業やってるからそこそこ自由なんやけど。20年くらい前に家電のネット販売をはじめてめちゃくちゃ儲かって、そこから好きなことやろうと思って自転車のリムや、ピストを作ったらピストバイクブームがきてまた儲かって。あと、「THE UNION」の牧田耕平くんと「Allstime」ってアウトドアブランドを立ち上げて……これもそこそこ売れてて、サボりながらも一応稼いでますわ(笑)
──お仕事も色々やってるじゃないですか……!
桶美さん:あと、風呂の曲だけかけるDJとしても活動してたんやけど、既存の曲だけだとネタが尽きるから「桶 MUSIC FACTORY」って風呂専門の音楽レーベルを立ち上げまして。第一弾で、EVISBEATSとNagipanの共作で「ON REI」と「FUROJECT A」って曲をリリースしました。「ON REI」は温冷浴をテーマにした曲で、MVはもちろん末広温泉で撮影してます。
──これは気持ちいい……! ここまで桶美さんの話を聞いて、このMV見たらもうダッシュで銭湯に行きたくなりますね。銭湯文化のこれからについてはどう考えていますか?
桶美さん:昔は家に風呂がないから銭湯に行くって人が多かったと思うけど、今は身体を洗う場所というより、娯楽や健康のための存在価値が大きい。エンタメ性がないと難しいですよね。昨今のサウナブームで銭湯に行く人は増えたけど、経営者の高齢化や施設の老朽化でどんどん廃業してるのも事実。
心斎橋にあった「清水湯」が昨年閉業になってみんな悲しんでますけど、後継者がいたとしても設備の修繕が不可能だったり、修理できる業者がいない。でも、ゆとなみ社みたいに、銭湯文化を残すために公衆浴場の継業をしている人たちもいて、本当に感謝しかないです。彼らは自分たちで修理もしてますからね。
──桶美さんのこれからの活動について教えてください。
桶美さん:いち銭湯ファンとして温浴施設に行き続けるだけですわ。もう、イベントやったりはしないつもり。実は、2022年の11月26日にやったイベントを最後に、山口百恵のように桶を床に置いて引退表明したんですよ。銭湯に行ったりInstagramで発信したりという意味で「フルタイム風呂タイム」の活動は続けるけど、イベントやって盛り上げるって活動は若い世代に任せたいなと。
──銭湯や温冷浴に興味を持った人に伝えたいことはありますか?
桶美さん:銭湯は好きになってほしいけど、イキる方向にいかないでほしいかな。サウナとか銭湯に行くことがイケてる! おしゃれ!……みたいに消費されるのは正直好きじゃない。元々銭湯に通ってた先人たちが行きにくくなるようなことにはなってほしくないから。「サ活」とか「サウナー」みたいな言葉も流行ってますけど、まずは先人を大事にしてからや! と思ってます。
──肝に銘じます。桶美さんの深過ぎる銭湯愛……話を聞くだけで身体がポカポカになりました。
大阪ステーションシティで桶美さん愛用銭湯アイテムが買えるお店
- ハンズ 梅田店
住所:〒530-8202 大阪府大阪市北区梅田3-1-1 大丸梅田店 10~12F
お問い合わせ:06-6347-7188
営業時間:10:00~20:00
定休日:大丸梅田店に準ずる
※LebeL(ルベル)ナチュラルヘアソープ ウィズ、その他様々なお風呂グッズを販売しています
大阪ステーションシティで「仕上がる」スポット
- コナミスポーツクラブ 大阪ステーションシティ
住所:〒530-0001 大阪府大阪市北区梅田3-1-3 大阪ステーションシティ ノースゲートビルディング11〜13F(入口11F)
営業時間:10:00~23:00/土10:00~20:00 /日・祝10:00~18:00
定休日:木曜、お盆、年末年始
お問い合わせ:06-6341-0573
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