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 映画『mentor』磯村勇斗インタビュー 

どない?

writer:華崎 陽子
photo:河上 良

『ミッシング』の𠮷田恵輔監督が
磯村勇斗×末澤誠也×綾野剛 競演で歪な三角関係を描く
映画『mentor』磯村勇斗インタビュー

ドラマ「不適切にもほどがある!」の愛すべきムッチ先輩から、映画『月』や『若き見知らぬ者たち』などで演じた生き辛さを抱える若者まで、幅広いキャラクターを巧みに演じ分ける俳優・磯村勇斗。そんな磯村がW主演を務める『mentor』が、10月16日(金)より、大阪ステーションシティシネマほか全国にて公開される。

15年前の花火遊びでアパートを全焼させた龍之介と拓海の前に、その火事で大火傷を負い、妻子を失った埜本が現れる。彼らにすべてを奪われながらも、謝罪する彼らを優しく包み込む埜本との交流によって狂わされていく2人の運命と、2人との再会によって変化していく埜本の姿を描く。

『空白』や『ミッシング』などで、思わず目を背けてしまいそうになる社会の暗部を痛烈に描いてきた𠮷田恵輔監督がオリジナル脚本を映画化。磯村勇斗とAぇ! groupの末澤誠也がW主演を務め、物語の鍵を握るメンターの埜本役で綾野剛が出演している。

そんな本作の公開に合わせ、15年前の罪の意識を押し殺すようにアーチェリー競技に打ち込み、オリンピック日本代表を目指す中、拓海や埜本と再会し、埜本をメンターのように慕う拓海の言動に動揺を隠せなくなる龍之介を演じる磯村が作品について語った。


 ──磯村さんが𠮷田恵輔監督の作品に参加されるのは初めてでしたが、𠮷田監督の作品はどのように観てらっしゃいましたか。 

𠮷田監督の作品は好きなので、いつかご一緒したいと思っていました。𠮷田監督の作品の中でも、今回は特にエンタテインメントに振っていて、𠮷田監督にとっても新しいジャンルだとおっしゃっていたので、僕自身、すごくいいタイミングで『mentor』に参加させてもらえたと感じています。 

──磯村さんが演じた龍之介は、激しい感情描写があるというよりは、ちょっとした動きの中で押し殺した感情を表現するようなキャラクターでした。𠮷田監督からはどのような演出があったのでしょうか。 

わかりやすくお伝えすると、想像の範囲内で芝居をさせないといいますか、想像できることをさせない。普遍的な動きをするような芝居を求めているのではなく、普通から外れた芝居が好みな方だと思います。普通に歩いてる人たちの中に歩き方が違う人がいたら目がいきますよね。そういった特徴といいますか、思わず人が見てしまうような行動を付け加える演出をする方でした。 

──龍之介は、15年前の罪の意識を押し殺すようにアーチェリー競技に打ち込んでいました。アーチェリーに集中していたはずが、拓海と埜本との出会いによって心がかき乱されていく龍之介の人物像を、どのように考えて演じられたのでしょうか。 

彼は3人の中で一番受け身なんです。龍之介は、15年前の事件から逃げるようにアーチェリーにのめり込んで、アーチェリーが彼の心の支えでもありましたし、平常心を保つ唯一の手段だった。オリンピックを目指している最中に拓海と埜本が現れて、過去の出来事が蘇ってきたことで動揺していく様は、ある意味、龍之介の見せ場でした。本当は拓海にも埜本にもできれば会いたくないのに会ってしまったという状況なので、彼の戸惑いは大事に演じたいと思っていました。 

──龍之介は一番受け身だとおっしゃいましたが、拓海にも埜本にも違和感を抱いて、彼らの言動を疑いながら見ている龍之介が、観客の目線に一番近いキャラクターだと思います。だからこそ、彼らの芝居を受けることがすごく大事だったと思います。𠮷田監督も龍之介は受けることが大事な役だから、磯村さんに任せておけば大丈夫だと思っていたとおっしゃっていましたが、お二人の演技を受け続けるというのはいかがでしたか。 

自分は受けることは好きですし、特に綾野さんとは5度目の共演で、プライベートでお会いすることもあるので、綾野さんがどれだけぶん回してきたとしても呼吸はわかるので、全く戸惑うことはありませんでした。 

──拓海を演じた末澤さんとは今回が初めての共演でしたが、末澤さん演じる拓海は予測不能な動きをする場面もあったと思います。末澤さんとの共演シーンはいかがでしたか。 

可笑しいなと思って見ていました。やはり拓海の動きは滑稽なので。本来であればこんなことしないよねと思うようなことを拓海は真っすぐやるので、どうしても、それを面白いと感じてしまう部分はありました。でも、龍之介としてはそういう顔を見せてはいけないので耐えることは大変でした。末澤くん自身が本当に誠実で、お芝居に対して真っすぐだからこそ、拓海というキャラクターが生き生きと動いていたので、龍之介としても自分としても、拓海を新鮮に、そして素直に受けとめることができました。 

──この映画は、メンターを題材にしながら、償いや赦し、反省や謝罪など様々な要素がありますが、磯村さんが一番心を動かされたのはどの部分でしたか? 

ネタバレになるので具体的には言えませんが、後半の方で埜本に訪れるある出来事を描いた場面です。𠮷田監督が、この映画のテーマのひとつは愛で、ハグをポイントにしているとおっしゃっているのですが、映画の中でいくつかハグポイントが出てくるんです。埜本の後半の方のハグというのは、この映画の重要なテーマが揺れ動いて、切り替わる瞬間なので、あそこはとてもいいシーンだなと思いました。 

──埜本と言うと、埜本と拓海が初めて対面するシーンでは、綾野さんのすごさを感じました。磯村さんは本作で改めて綾野さんのすごさを感じることはありましたか。 

綾野さんがいろんなアイデアを監督と出し合いながら作っていたのをずっと現場で見ていたので、改めて、すごく貪欲でクリエイティブな方だと感じました。OKが出たとしても満足せずに、さらに高みを目指していくスタイルは、すごくエネルギッシュに見えました。映画はこうやって作っていくものだよなと改めて感じながら、大きな先輩の背中を見ていました。 

──本作は、磯村さんが生まれ育った沼津で撮影されましたが、これは偶然だったのでしょうか。 

そうです。元々𠮷田監督が沼津でこの作品を撮ることを決めていて、その後で僕の方に出演のお話をいただいたので。 

──磯村さんが馴染みのある場所で撮影されたとお聞きしましたが、馴染みのある場所で映画の撮影をするというのはなかなかない経験だと思います。 

この映画のほとんどを沼津や静岡県内で撮影しました。自分の知っている景色を龍之介として見なければいけなかったので、僕はずっと不思議な感覚で撮影をしていました。自分の馴染みのある場所に末澤くんや綾野さんがいらっしゃることも含めて。それでもやはり、地元で撮影できるということに嬉しい気持ちはありました。僕の地元での全ての経験を龍之介という役に使うことができましたから。 

──磯村さんにとってはもちろんですが、龍之介にとっても生まれ育った土地ということですもんね。 

その部分にリアリティがあるので、すごく助かりました。 

──磯村さんは沼津で映画祭も主催されています。 

静岡で映画文化を育んでいきたいという目的で始めました。 

──ご自身の地元で撮影される作品に主役として出演するというのは、嬉しい偶然というか、運命を感じますね。 

そうですね。なかなか地元で映画を撮影することもないですし、今後もあるかないかだと思うので、今回、地元で撮影できたのは嬉しかったです。 

──最後に磯村さんから本作を観られる方にメッセージをお願いします。 

登場人物3人の人間模様が本当に可笑しくて、奇妙で、時に怖くて。感情を揺さぶられたり心が震えたりするような体験を、ぜひ劇場で体感してもらいたいです。冒頭から心をえぐられるようなシーンで始まりますが、それに引っ張られることなく、あくまでもエンタテインメントの映画として笑っていいんだよということを伝えたいです。観ていただいた方から、笑っていいのか迷ったという声を聞くこともあるので、存分に笑ってください、と。迷ったら笑え、この記事はそれだけでもいいぐらいです。今まで話したことを全部書かなくてもいいので、このことを伝えたいです(笑)。 

大阪ステーションシティシネマ支配人からのコメント 
ヘビーな題材ながら、笑いと恐怖が入り混じる緩急の凄さに圧倒されました。キャスト陣の怪演と𠮷田恵輔監督ならではの不気味な人間描写に終始ゾクゾクしっぱなしです。「mentor」=「助言者」「相談相手」「導き手」という意味らしいのですが、観終わった後もその意味をどう捉えるか思考が止まらない作品です。是非、大阪ステーションシティシネマでご鑑賞下さい。 

Movie Data 

『mentor』 

▼10月16日(金)より、大阪ステーションシティシネマほか全国にて公開 

出演:磯村勇斗 末澤誠也
木南晴夏 / 酒井若菜 川上麻衣子 二村仁弥
黒沢あすか 田村泰二郎
綾野剛
脚本・監督:𠮷田恵輔

(C)2026「mentor」製作委員会

Profile 

磯村勇斗 

いそむら・はやと●1992年9月11日、静岡県出身。テレビドラマ「仮面ライダーゴースト」(15-16)で注目を集め、その後、NHK連続テレビ小説「ひよっこ」(17)でヒロインの夫役を演じて脚光を浴びる。2022年に『ヤクザと家族 The Family』(21/藤井道人監督)、劇場版『きのう何食べた?』(21/ 中江和仁監督)で第45回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。主な出演映画は『東京リベンジャーズ』シリーズ(英勉監督)、岸善幸監督作『前科者』(22)、第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門正式出品の『PLAN75』(22/早川千絵監督)、映画初主演を務めた『ビリーバーズ』(22/城定秀夫監督)、『最後まで行く』(23/藤井道人監督)、『波紋』(23/萩上直子監督)、『渇水』(23/高橋正弥監督)、『月』(23/石井裕也監督)、『正欲』(23/岸善幸監督)、『若き見知らぬ者たち』(24/内山拓也監督)など。テレビドラマでも「きのう何食べた? season2」(23)や「不適切にもほどがある!」(24)、「クジャクのダンス、誰が見た?」(25)などが話題を呼んだ。