OSAKA STATION CITY GUIDE

do-ya?[ドーヤ?]

【きだてたくさん】数千点の文具に囲まれるマニアが今、ちょうどほしいもの

どや?

「大阪ステーションシティで1万円を自由に使ってください!」と言われたら、あの人は何をする?ゲストを呼んで、大阪ステーションシティで1万円を使い切ってもらうこの連載。Vol.3となる今回は、文具マニアのきだてたくさんが、大丸梅田店の「ハンズ」をサーチします。

photo&comment:きだてたく
edit:do-ya?編集部

きだてたくさん

1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生のころ、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「おもしろい文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。

この記事の内容

  • 今回は「興味本位デッキ」でストレス解消
  • 1点目:トンボ発。涼感を呼ぶクールな逸品
  • 2点目:出先でケーブル調達はもう勘弁!ということで
  • 3点目&4点目:「おしり付箋」にみるブームへの“解釈違い”
  • 5点目:誰もが知る某少年漫画雑誌の「あの紙」がノートに
  • 6点目:これぞ興味本位買いの極み。ローラースタンプペン
  • ふり返り 〜続ける理由は文房具への愛、というより〜

今回は「興味本位デッキ」でストレス解消

「僕、もう興味本位で文房具買えない体になっちゃってるんですよね」と話すきだてさん。文房具レビューのお仕事も多いため、「これを紹介したらどういう人に刺さるかなとか、どうしてもそういう視点になってしまうので。意外とあまり自分のための文房具がない」とのこと。

マニア歴は数十年、集めてきた数千点の文具はとっくの昔に家に収まらなくなり、倉庫を借りて管理しているといいます。「全部で何がどれくらいあるかとか、もう、わかんないです本当に……」。

きだてさんの仕事部屋。引き出しやコンテナの中には文房具がぎっしり

だからこそ今日は100パーセント「自分のため」に1万円を使い切り。文房具マニアの完全なる“興味本位デッキ”を、きだてさん自身のコメントで解説してもらいます。

※商品や料金、購入店舗などの掲載情報は、2023年2月時点のものです。現在とは販売状況が異なる場合があります。

1点目:トンボ発。涼感を呼ぶクールな逸品

トンボ鉛筆「ZOOM L1」

■ きだてさんコメント

トンボ鉛筆のデザイン筆記具ブランド ZOOMシリーズが今年の3月にリブランディングされた、そのシリーズ第一弾のひとつが「L1」です。

シルバーの金属軸を磨りガラスっぽい透明樹脂で包んだ2層構造が、まるで氷のような質感でめちゃくちゃクール。あまりに涼しげで美しいので、今年の夏のメイン筆記具はこれでいくしか…! とリリース情報を見た瞬間から狙ってました。

透明軸上にプリントされた「ZOOM」というロゴが金属軸に影を落として二重に見える感じや、キャップの端面がフラットな円筒でなく微妙に波打ってるようなカットになってたり……など、あちこち細部にわたって相当にオシャレ。握るたびに「うおー、かっこいいペン使ってるぜ俺」みたいなアガりめの気分になれるので、ペン本体のお値段は4千円(+税)ですが、実質はこちらがタダで6千円もらったぐらいの印象ですね。

リフィルはゲルインクなんですが、これが爽快感めちゃ高いサラッサラの書き味で、軸の氷っぽい雰囲気にマッチしているのもまたステキです。

2点目:出先でケーブル調達はもう勘弁!ということで

STARTTS「コードが入るペンケース<タテ>」

■ きだてさんコメント

ものすごくシンプルな箱形のナイロンペンケースなんですが、表面に深めのメッシュポケットがついているのがポイント。製品名通り、ここにコード/ケーブル類をドボッと突っ込んでおくことができます。

ケーブルって出先で必要な時に限って忘れてきてるんですよね。慌ててコンビニで買った各種ケーブルたちが家に無限に溜まっていくって「あるある」じゃないですか?

それにウンザリして普段からケーブルはガジェットポーチに入れて持ち歩いてるんですが、いざ必要な時になると、そのポーチをカバンから引きずり出すのが面倒くさくて……。

なかでも使用頻度の高いライトニングケーブル(iPhoneとPCをつなぐのによく使う)をこの深めポケットに放り込んでおくだけで、面倒くささがだいぶ軽減されるんじゃね?という気がしたので、試してみることにしました。

あと、中にも小分けメッシュポケットがあるので、そこにはビデオ会議用の小型インカムを入れて運用してみようと思います。

3点目&4点目:「おしり付箋」にみるブームへの“解釈違い”

マインドウェイブ「スタンドスティックマーカー 三毛猫のおしり」

サンスター文具「ぷにけつふせん ねこ」

■ きだてさんコメント

時は今、世はまさに「大おしり時代」。動物のおしり写真はインスタなどでもド鉄板なコンテンツなので、流行りものに敏感な文房具業界もきちんと時流に乗って製品化してくるわけです。

それにしても、こうやって並べてみると、同じ「おしりのふせん化」であっても、それぞれおしりのかわいさに対する解釈が違うのが分かりますね。

サンスター文具がプニプニ手触りの立体表紙でおしりのふっくら感に焦点を当てたのに対して、マインドウェイブは振り返りポーズで顔も含めたデザインに。個人的には、おしりのポテンシャルを信じ切ったサンスター文具のほうが好みですが、おしりに興味ない派まで取り込もうとするならマインドウェイブ方式もありかもしれません。

ちなみに我が家にはリアル猫がいるので、わざわざふせんという形で猫のおしりを見る必要は無いんですが……とはいえ猫のおしりはそれだけで尊いものですからね。

5点目:誰もが知る某少年漫画雑誌の「あの紙」がノートに

オソブランコ「少年MOSH」

※こちらの商品は「オトメ文具博2023」にて4/3までの期間限定販売です。

■ きだてさんコメント

ちょうど文房具フェアをやっていたので、そこで見つけた商品です。なんばのギャラリー/雑貨店「オソブランコ」さんが作ったオリジナルノート。外見は完全に週刊少年漫画雑誌のパロディですが、なによりもすごいのが、中の用紙までちゃんと週刊漫画誌でお馴染みのあの紙ということ。ザラザラの手触りとくすんだ緑やオレンジの紙色は、日本人ならまず100人中100人が、めくった瞬間に「あの紙!」と声が出ちゃうはず。

ちなみにあの紙は「印刷せんか紙」と呼ばれるもので、古紙100%の再生紙です。その古紙には新聞も多く含まれてるんですが、パルプにする際に印刷用のインクを完全に取り去ることができず黒ずんでしまうため、それが目立たないように色をつけているんです。

まぁ、そういうウンチクはさておき、漫画が印刷されていない無地のあの紙はなかなか違和感があるというか、インパクト十分。なにより、そこに自分で絵を描いて漫画家気分に浸れるというのも良くないですか?

(実はこのノート、すでに1冊持ってるんですが、湿気のせいでガビガビになっちゃったので、改めて買い直しました)

ちゃんと作者コメントも書き込めます

6点目:これぞ興味本位買いの極み。ローラースタンプペン

サンスター文具「コロロ3 波線/点線」

■ きだてさんコメント

いわゆるツインマーカータイプのカラーサインペンなんですが、片側が細書きできるニードルになっているのに対し、残るもう片側が「波線」または「点線」が描けるローラースタンプになってる、というのがユニークです。

たとえばノートをとるときに、波線のアンダーラインで強調したり、点線でつないで関係性を示すことがあるんですが……波線とか点線って、実は意外ときれいに描くのが難しいんですよね。ですが、これならローラーをコロコロッと転がすだけできれいなラインになるので、超お手軽。

あと、このローラーを転がすときに手に感じる振動が妙に気持ちいいんですよね。波線だと細かく右左に跳ねるような抵抗があるし、点線はシンプルにビビビビビッという断続的な震えがくるし。それをグッと抑え込んで紙にスタンプすると、暴れ馬を乗りこなしたような達成感があって。ついつい用もないのに延々と転がしてしまうわけです。

ところでなんで製品名が「3」かと言うと、単にカラーラインアップ違いの第3弾、というだけの話です。

ふり返り 〜続ける理由は文房具への愛、というより〜

1万円使い切りを終えたきだてさんに、ふり返りインタビューを行いました。

──小学校時代から文房具にハマり続けるなかで、好みの変化ってありましたか?

きだてさん:ほとんど無いんですよ。一時的に「万年筆っておもしろいな」とか、ちょいちょいと波はあるんですが、基本的にはフラットに、文房具全部が僕は好きなので。

──それはもう愛ですね。

きだてさん:いや……たぶん愛とは違うんですよね。

──意外にも、文房具への「好き」は愛ではない?

きだてさん:僕、ものすごい不器用なんですよ。字も死ぬほど下手だし、カッターナイフで真っ直ぐ線切るのもおぼつかないぐらい。自分の不器用さをましにしてくれるというか、「身体拡張道具」としての文房具をリスペクトしてるんですよ。便利な文房具にギリ生かされている人間なので。

──愛というよりリスペクト。たしかに、レビューからもその目線は感じられますね。一方できだてさんは「色物文具愛好家」でもあるじゃないですか。その二面性がちょっと不思議に感じられるのですが……。

きだてさん:そうなんですよ。「色物文具」というジャンルは、言わば文房具の「バグ」。「本来便利であるはずの文房具なのに、なぜか便利じゃないものが市場に紛れ込んでしまうのはなんでだろう?」という疑問からスタートして、いろいろと考えるのがおもしろいんです。

──便利さへのリスペクトがあるからこそ、それだけではない側面にも心ひかれてしまうと。

きだてさん:今日のおしり付箋ふたつも考察しがいがありますね。「おしりってなんかかわいいよね」というおしりブームにおいて、人々の心を掴んだ「かわいさ」の本質はどこにあると捉えているのか、開発者の解釈の違いが浮き彫りになっています。社会の流行や課題をどうとらえて、どう落とし込んだらこうなるのかを考えるのが楽しいんですよ。

──もはや文房具を通じた文化人類学。

きだてさん:今回は、ターゲットとなる人を設定して商品を探すのとは違う、完全なる自己満足による買い物ができて最高でした。

──ハンズのラインナップはいかがでしたか?

きだてさん:売り場面積に違いはあれど、どこの店舗にもハンズならではの「安心感」がありますね。「とりあえずハンズに行けばあるかな」みたいな。普段も、店頭で買うときはまずハンズに電話しています。これからもお世話になります!