OSAKA STATION CITY GUIDE

do-ya?[ドーヤ?]

発想力を開花!子どもと楽しむ「大阪駅パブリックアート散歩」。話題の荒木飛呂彦作品やうめきた公園の彫刻など新作10点

どうやろ

荒木飛呂彦氏の作品で大きな話題を呼んだ、アートプロジェクト「WARP(WEST ART PROJECT)」や、2024年9月にオープンした「うめきた公園」に国際的なアーティストの彫刻がお披露目になるなど、この秋、大阪駅周辺のパブリックアートがアツイ! 新たな大阪駅周辺の楽しみ方を発掘しました!

write:小島知世
edit:人間編集部
photo:木村華子

2024年7月にオープンした「イノゲート大阪」や、9月に一部が先行オープンした「グラングリーン大阪」。話題の新施設内に、国際的なアーティストたちによるパブリックアートが続々と増えています。継続的にアートプロジェクトを展開している「グランフロント大阪」含め、ターミナルエリア全体にたくさんのアート作品が点在し、ちょっとした空き時間にアート散策が楽しめるんです。

今回は、様々なアートプロジェクトを手がけてきた、心斎橋PARCOの「TANK酒場」店主・古谷高治さんとその子どもたちを、アート散歩へとお誘いしました。

古谷高治
大阪府出身。マロニエファッションデザイン専門学校を卒業して就職したのち、1994年にアメ村で「TANK GALLERY」を始める。2002年にFM802のアートプロジェクトが手がける「digmeout CAFE」の店長に就任し、2006年にリニューアル移転した「digmeout ART&DINER」でマスターを務める。2021年に心斎橋PARCO地下2階心斎橋ネオン食堂街に「TANK酒場」をオープン。多くのイベント企画やアートプロジェクトを手がけ、アーティストの活躍の場をつくる。
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こはるちゃん
中学1年生。毎日ソフトテニス部の練習に励む、しっかり者のお姉ちゃん。興味のある作品は立体作品。

ちとせちゃん
元気いっぱい小学2年生。ちいかわが好き。最近ハマっていることはYouTubeを見ながらお絵描き。

普段はミナミを拠点にイベントや展示の企画などに取り組む古谷さん。本日は久しぶりの“親子でキタへのお出かけ”なのだそう。「前はみんなで展示を見たりしていたけれど、最近は部活が忙しいから」とこはるちゃん。というわけで、本日は親子で気ままにアートを楽しむ、ちょっぴり特別な一日になりそうです。

雲の中で何を見てる? 想像が止まらない不思議な立体作品

©Ram Katzir

まずは、グラングリーン大阪「うめきた公園」へ。ターミナル駅直結の都市型公園としては世界最大規模の広さを誇る約45,000㎡の巨大公園内に、国際的なアーティスト3組6点の彫刻が設置されました。

ノースパーク内にある、企画展やイベントが開催される新たな文化装置「VS.(ヴイエス)」の前に、頭上に雲がかかったような3人の彫刻を発見。アムステルダムを拠点として活動するアーティスト、ラム・カツィールの作品『YUMEMITAI』です。

©Ram Katzir

古谷:おぉー、すごいすごい、全員写ってる!

ちとせ:眩しいー! 

古谷:タイトルは『YUMEMITAI』やって。

こはる:頭の中が雲に入っているから、夢の中に入ってるみたい(夢みたい)ということなのかな?

©Ram Katzir

こはる:ねーねー、ひとりは、何か大きなカバンを持ってるよ。

ちとせ:これは、拾ったお金がたくさん入ってるんじゃない?

古谷:この人たちは、どんな人たちやと思う?

ちとせ:家族。お兄ちゃんと弟、お母さん! カバンを持ってるのがお母さん!

古谷:じゃあお兄ちゃんは、何してるんやろ。この手の位置、本を読んでるのかな?

©Ram Katzir

ちとせ:スマホ持ってるんじゃない?

古谷:ほんまや、ちょうど携帯のサイズやな。

実際は、うめきた公園を訪れる様々な属性をもつ人をモチーフに、人々がアイディアやひらめきを共有している様子を表した作品。作品の説明に「人々はインターネットを通じて共有の夢を見ているのかもしれません」と書かれていました。

作品概要:YUMEMITAI

サウスパークの玄関口に、子どもたちを魅了する作品が出現!

お次は、ノースパークを出てサウスパークへ移動しましょう。

古谷:本当に緑がたくさんで、うめきた公園ええやん〜。あっちになんか、ある!

ちとせ:『名探偵コナン』で、コナンが飲んだカプセルみたい!

©Jun Kaneko

古谷:コナンのカプセル……?

こはる:飲んだら子どもになるやつ。

古谷:あ〜! よく見ると、こっち側はボーダーになってるね。これは何やろ?

ちとせ:お茶碗みたい! あ、 明太子ごはんだ!

こはる:明太子ごはん、いいね。

©Jun Kaneko

古谷:上の赤い部分が明太子で、このボーダーがお茶碗ってこと? 確かに陶器の質感がお茶碗みたいやな。

ちとせ:この黒い丸は、ゴマつぶ。だから、「明太子ゴマごはん」。

こはる:お腹減ってきた(笑)

本作品は、アメリカはネブラスカ州を拠点に活動する陶芸家・金子潤による作品『FULL BLOOM I 』。題名から何か植物のような気配もありますが、「明太子ゴマごはん」という、ちとせちゃんの発想も「なるほど」の連続です。

想像を膨らませながら、自由に「何に見えるか」話せるのも、アートを見る楽しさのひとつ。子どもたちが次々と口にする言葉を聞いていくと、作品を見る楽しさもより広がるように感じます。

©Jun Kaneko
草木の中からニョキっと生えてきたような『FULL BLOOM II』。

すぐ近くには色違いのような作品が。こちらも金子潤による作品『FULL BLOOM II』。

ちとせ:これは、ソーダだね。ガリガリくんみたいな青いソーダ。

確かに下はカップで、上が青いソーダのような見た目です。

古谷:「FULL BLOOM」は「満開」っていう意味か。よくよく周りを見てみたら、作品の周りにすごくたくさん植物名が書かれたプレートがあるね。こんなにいろんな種類が植えてられるんやって。季節によっていろいろな花が満開になる、それでFULL BLOOMなんかなあ。

作品の手前にあったベンチのようなものも「クッションみたいで気持ちいい〜」と大好評。石のような見た目で一見硬そうだけれど、その印象とは裏腹に、触ってみると絶妙な反撥性あり。

作品概要:FULL BLOOM I / FULL BLOOM II

ベンチにもなり、アスレチックにもなる……? 大理石の作品がもたらすもの

サウスパークの奥へ進むと、大きな噴水広場が姿を現しました。取材時は9月末とはいえ、まだまだ暑い一日。じゃぶじゃぶと水に浸かり、走り回る子どもたちで大賑わいです。

そんな噴水広場の近くにあるのが、こちらの作品。

©Kate Thomson
©Kate Thomson
不思議な形に、くぐったりのぼってみたりとおおはしゃぎのちとせちゃん。大理石で手がけられた作品を触りながら「うちの階段の手すりもこうだったらな〜」と、ひと言。

古谷:タイトルなんやと思う?

ちとせ:とうふ!!

©Kate Thomson

作品近くにあるプレートを見ると、タイトルは『Serendipity』。スコットランド出身で現在は岩手県を拠点に活動するアーティスト、ケイト・トムソンによる作品です。見渡すと、作品に座ってランチをするファミリーや、立ち話をする人など、公園での過ごし方の一部にもなっていました。

「思わぬものを偶然に発見する才能」を意味する「Serendipity」に込められたメッセージとはいったいなんなのでしょう?

古谷:偶然ここで人と出会ったりするとか? あと、天然の石やから、こうやってみんなが触っていったら、何年も経つうちにきっと形も変わってくると思う。そこに「Serendipity」という言葉の偶然性みたいな意味があるかもしれないね。

©Kate Thomson
『Serendipity』では、アー写のような家族写真も撮れてしまう!利用者のクリエイティビティを刺激する、座り方を限定しない形状になっている。

ちとせ:これ、跳び箱みたいだし、くぐったりいろんなことできるし、楽しい!

こはる:私、最高で跳び箱8段飛べるよ。

ちとせ:すごい。いいな〜。

作品概要:Serendipity

「大阪のセントラルパーク」と、うたいたくなるような開けた空間には、ピクニックをする人が溢れています。中には、アウトドア感を楽しみながらパソコンで仕事をする人もいて、思い思いに過ごせる自由な空間が魅力。

歩いていると、普段街中では見つからないようなイガイガの帽子がついたどんぐりをたくさん発見。パーク内は他にも季節の花だけでなくイチョウ並木もあり、いつの時期に来ても表情の移り変わりが楽しめるのがいいですね。

「グラングリーン大阪」は広大なエリアのところどころに、ベンチやテーブルがあるのもポイント。ただいま、お小遣い増額のための家族会議中。

「イノゲート大阪」には、記念撮影にもオススメなアートが続々登場

うめきた公園を後にして「イノゲート大阪」へ進むと、大きな立体文字の作品が出現しました。

「お、三重野龍くんやん! 知り合いのグラフィックデザイナーです」と、古谷さん。

©Ryu Mieno
大阪というまちのシンボルマークのような立体作品『大阪』。美術や舞台作品のロゴデザインなどをはじめ、文字を軸にした作品を手がける三重野龍ならでは。

こはる:これ、漢字? 

古谷:白い部分が「大」で緑の部分が「阪」になってるのか。

©Ryu Mieno
息ぴったりで「大阪」ポーズをとる古谷家。

続いて建物の中へ入っていくと、何やら液晶画面の中に、水彩画のようなものが現れては消えていきます……。

©Sakamoto Shunta
イノゲート大阪2階にあるSakamoto Shuntaによる『People at Inogate Osaka』。

古谷:来て来て。これ、おもろいやん。ほら、ちーちゃん(ちとせ)写ってる!! ちょっとポーズとってみよう。

©Sakamoto Shunta

こはる:さっき『大阪』のところでみんなでやったポーズを、ここでやったら楽しい形になりそうじゃない?

©Sakamoto Shunta

こちらは、クリエイターズクラブNEWを運営するアートディレクター、Sakamoto Shuntaによる『People at Inogate Osaka』。作品の前に立つと姿が記録され、電子絵画を生成。その時その場にいた人を集める記録のようなおもしろさも。

©So So So
キャプション:阿部拓海と木村優作からなるデザインユニット「So So So」が手がけた『variable form 34.7016909, 135.4904897』。リアルタイムで取得した情報を時計やカレンダーに変換して表現。
©Ryuji Okura
キャプション:1階へ降りると、壁にはグラフィックデザイナーの大倉龍司が手がけた『Point』が。
©Rena & Motoki
キャプション:大阪駅西口改札前には、Rena & Motokiによる『Bloom』。

古谷:この作品もBloomということは、開花がこの場所全体のキーワードなのかも?

ちとせ:なんか大きな丸いものがあるー!

イノゲート大阪の出入り口には、大きな立体作品の姿が。

正面に回ってみると……

©LUCKY LAND COMMUNICATIONS / 集英社

古谷:これが、話題の荒木飛呂彦さんの作品かー! かっこええなあ。

荒木飛呂彦が初めて手がけたというパブリックアート『THE FOUNTAIN BOY』。撮影中も、この作品をひと目見ようと次々と人がやってきました。実はこの直径2メートルもある作品、ステンドグラスを使ってできていて、荒木さんの作品を表現するために、職人さんたちが技術を駆使したそう。

間近でみると、荒木さんのタッチをステンドグラスで緻密に表現する職人さんたちの技を目の当たりにできます。
©LUCKY LAND COMMUNICATIONS / 集英社
かつての大阪駅のシンボル・噴水小僧をテーマに作成した作品。中央でポーズをとっているのが「噴水小僧」。

他にも、大阪ステーションシティには、様々なモニュメントがあるので探してみてください。

©Yusuke Aida.
ノースゲートビルディング 1F中央にある、陶芸家・會田雄亮さん作のモニュメント『暁に立つ』。

最後は「ART SCRAMBLE」でおなじみのグランフロント大阪「うめきた広場」へ

大階段を降りて、グランフロント大阪の南館「せせらぎテラス」の方へ。

「うめきた広場」では、グランフロント大阪から全国、そして世界へ羽ばたくアーティストをサポートしようと2021年に始まったアートプロジェクト「ART SCRAMBLE」が続いています。プロジェクト・ディレクターに椿昇、キュレーターにヤノベケンジ、Mon Koutaro Ooyamaを迎え、若手アーティストの展示が繰り広げられ、現在は第8弾目のアーティストによる作品を展示中。

キャプション:©Akane Saijo
西條茜『Rebecca/レベッカ』※2025年3月上旬(未定)までの期間限定展示

階段を降りたその先に見つけたのは……

こはる:心臓みたい……。

『Rebecca/レベッカ』から流れ出る水の動きを、まじまじと見つめる古谷家。

古谷:信楽焼でできてるんや。作品から、噴水のように水が出ているけど、一日数回循環が止まるんやって。

こはる:このボコボコした部分が、泡っぽい感じにも見える。

自由な発想でパブリックアートを楽しもう

さて、パブリックアート散歩もこれにて終了。ずばり、感想は?

古谷:俺は、やっぱり荒木飛呂彦さんの『THE FOUNTAIN BOY』が一番よかったな〜。

こはる:私は、明太子ゴマごはんが、一番おもしろかった。

ちとせ:私も明太子ゴマごはん!!

©Jun Kaneko

古谷:公園もすごいよかったよね。

こはる:『FULL BLOOM Ⅱ』のところにあったやわらかいベンチがよかった。

古谷:あと、芝生広場のところにあったドームの形もおもしろかったよね。

ちとせ:ダンゴムシみたいだった。あっ違う! ダイオウグソクムシ!

古谷:アートだけやなくてベンチも、形がおもしろいものが多かったよね。やっぱりまちの中にこうやってアートが点在しているのっていいな。新しいまちという感じがした。ミナミにもアートに関わるものはあるけれど、こうやって新しいシンボルになるような作品が点在しているのは、「豊かなまち」を表しているように感じます。

©Jun Kaneko

立体だけでなく電子絵画など異なる表現を使った作品が点在するターミナルエリアを歩くこと約2時間。広大な緑の公園にまるでアクセントとなるように点在するアートを見ながら、子どもたちの発言に耳を傾けていくと、アートを通して自由に考え会話をする楽しさに気付かされます。

散策途中に古谷さんがふと口にした「開花がひとつのキーワードかもしれない」というひと言。その言葉の通り、子どもも大人も一緒に自分なりの楽しみ方を開花できる、可能性が詰まった蕾で溢れた場所なのかもしれません。

うめきた公園(グラングリーン大阪)

WARP(イノゲート大阪)

RT SCRAMBLE(グランフロント大阪)

\アート展示を見るならこちら/

ART GALLERY UMEDA

住所:〒530-8202 大阪市北区梅田3-1-1 大丸梅田店 11階
公式サイト

VS.

住所:〒530-0011 大阪府大阪市北区大深町6-86 グラングリーン大阪 うめきた公園 ノースパーク
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