大阪駅150年の疾走~街と駅が駆け抜けた歴史の軌道(キドウ)~
どや?
交通機関の枠を越えて、「大阪ステーションシティ」の文字通りひとつの「街」として発展を遂げた大阪駅。
今でこそ大阪のシンボルとして世界に存在感を発揮するが、その軌跡には幾多の物語があった。
大阪に「梅田すてん所」登場?!
初代大阪駅
1874年5月11日開業。駅舎は当時かなり珍しい、木造レンガ貼りの近世フランス式ゴシック風建築様式を採用し、旧中央郵便局西側に建設された。
ところが最初は、大阪〜神戸間の鉄道開通に合わせるため、ホーム以外はなんと未完成だったとか。広い敷地に停車場本屋だけが建っていたそうだ。
その後、名物となる駅前広場の茶屋や築山庭園も設けられ、たちまち大阪随一のスポットになる。見物に訪れる人は途切れることなく、「梅田すてん所」の愛称や「梅田停車場」と呼ばれて愛された。
ちなみに現在は「大阪駅=梅田」が当たり前だが、もともとの候補地は堂島だったのだ。しかし、「汽車の火の粉で街が火事になる」と住民の反対運動があって断念。梅田曽根崎に変更された経緯がある。
なぜ梅田だったのか? 梅田はもともと「埋田」といわれ、墓地だったため周囲にほとんど何もなく、土地も安価だったのだ。そんな場所に忽然と現れた洋風建築は、大きなインパクトを与えたに違いない。駅の完成後も卒塔婆が見られたというが、にわかには信じられない風景だ。
え?駅に高級食堂が開店!
第2代大阪駅
初代駅舎が手狭になり、1901年7月1日に2代目が現在とほぼ同じ位置に建てられた。今日の大阪駅前の前身といえるものである。
建物は、正面中央部分の吹き抜けが特徴的な石張りのゴシック風建築。その豪壮な佇まいは、日本銀行大阪支店、泉布観と並び「大阪の三名所」と称された。人々からは「石の駅」として親しまれ、一説には改札口を「お厨子のようだ」とありがたがったというエピソードが残っている。
1903年には駅前に市電が開通した。駅前広場も茶屋や庭園があった初代とは異なり、交通の便を考慮して整備された。また、大阪郵便電信局梅田支局など公共施設も建てられ、大阪の玄関口として更なる進化を遂げたのである。
明治30年代には、駅の構内販売も大きく拡充。特に食堂の高級化が加速し、明治44年には洋食や洋酒を提供するビアホール風レストランが開業する。交通利用のみに留まらない、コミュニケーションの場としての新しい駅のカタチが生まれた。
戦争で鉄骨を奪われた影の犠牲者?
第3代大阪駅
3代目大阪駅舎は単なる駅の開発でなく、駅前広場整備、区画整理、地下鉄建設、私鉄ターミナル改造まで含む、官を巻き込んだ一大都市計画事業になった。当初のプランは5階建てのビルで、2階までが駅設備。中央部に大空間の吹き抜けを設け、上層部は万博を意識してホテルの建設を目指すものだった。
駅機能を担う2階部分まで完成した1940年6月に開業し、引き続き上層階の工事は進められたが太平洋戦争開戦後の1942年に状況が一変。金属供出のため4・5階の鉄骨が切り取られてしまう。そのため1943年に完成した駅舎は駅機能のみとなり、外観も予定とは異なる凸型となった。
駅舎は、アクティ大阪(現サウスゲートビルディング)建設のために取り壊される昭和55年まで、40年もの長期に亘り大阪の交通を支えた。その後、駅舎の一部は大阪環状線の高架橋として利用され、現在も姿を変えて活躍している。
泊まれる、買える、遊べる駅にいらっしゃ〜い!
第4代大阪駅
昭和40年代になると大阪駅前市街地開発事業が始まり、周辺環境の整備が行われた。そうした中で、大阪駅は地域のランドマークでありながら近隣の建築物と比較して低層であったため、バランスの悪さが課題として浮上。地元からも大阪の玄関口として誇りを持てるスタイルと、充実した設備・機能を備えたターミナルビルを求める声が上がるようになった。
こうして第4代大阪駅は、“業務施設機能と商業施設機能を併せ持つ”というコンセプトのもと、百貨店・ホテル・旅行サービス機能等を取り入れた総合ターミナルビルとして昭和54年12月15日に完成した。昭和58年4月25日には「アクティ大阪」の開業が続いた。第3代大阪駅で構想されたターミナルホテル計画から半世紀以上。長年の想いが、ここに結実した。
2000年には、「あの駅この駅すてきな駅」をキャッチフレーズに選定された、第1回近畿の駅100選にも選ばれている。
駅からひとつの街へと向けて出発進行!
第5代大阪駅
1999年から産・官・学が連携し、水と緑を取り入れた国際都市をテーマに第5代大阪駅の開発プロジェクトが始動。2011年春、印象的な大屋根とともに、現在の「大阪ステーションシティ」が完成した。大阪初進出だった「JR大阪三越伊勢丹」、大型ショッピングモール「ルクア大阪」が常にトレンドの最先端を発信し、シネマコンプレックスやスポーツジム、さらには保育所、クリニックまで備えた施設内は駅でありながら「新しい街」の誕生を予感させるものだった。
常に時代の最前線を走ってきた大阪駅。
そのスピード感と力強く前進し続ける姿は変わることなく、これからも次の未来へと大阪を運んでくれるだろう。
JUST150 , NEXT150.
駅開発から都市づくりへ
訪れたい! 歩きたい! 遊びたい!
移動の拠点から観光スポットとしての大阪駅へ。
止まることのなかった槌音もようやく収まり、大阪駅西側の拡大がいよいよ目前に迫っている。大阪駅の地下には新しいホームが新設され、この秋にかけてはJPタワー大阪やイノゲート大阪、2025年春にはうめきたグリーンプレイスの街びらきが次々と予定されている。
150年の歴史を越え、次の150年へ向かって―。
ワクワクが止まらない大阪駅の大進化。
どのように生まれ変わったのか、JR西日本の「地域まちづくり本部」の担当者にお話を伺った。
―以前は利便性を主眼に置いて駅の整備が行われましたが、近年は街を育て、価値や魅力を向上させる街づくりが主流になっています。これまでの駅開発と今回の大きな違いについて教えてください
今までの開発は、駅直結の駅ビルを作り、その中で完結させることが多かったように思います。それは、大阪駅=交通結節点(さまざまな交通手段の接続が行われる乗り換え拠点)であり、どちらかというと機能的で効率的なものが求められていたからでしょう。ただ、新型コロナウイルスによる未曽有の事態を通じ、そもそもの「移動」について時間的、金銭的なコストが加速度的に意識されるようになったと感じています。つまり、駅は便利なだけではなく、駅を含めた街自体に魅力がないと人は移動しなくなってきているように思うのです。
そのため、今回の大阪駅西地区の開発では、今までの「大阪ステーションシティ」という大阪駅を中心とした街を拡大させると共に、駅直結の約45,000㎡にも及ぶ世界でも類を見ない大規模都市公園の玄関口としての役割を担いました。今後、地域の事業者の皆さんと連携し、さらに大阪梅田という「街」に来たい、歩いてみたいと思わせるエリア全体の目的づくりをしていきたいと考えています。
―未来を予感させる最新のホームや新施設など、JR西日本は多彩な活躍をされています。ソフト面においてはどのような取り組みがありますか
周辺事業者と一体となって、夏や冬の賑わいイベントなどを通じた「歩いて楽しい街づくり」や「安心安全な街の防災情報発信」など様々な活動を行っています。
その中でJR西日本は、梅田に関わる人が街を大切に想う「シビックプライド」の醸成を目指したクリスマスシーズンイベント「UMEDA MEETS HEART」のパートを担い、”大切な人を想う気持ち”や“街を想うやさしさと思いやり”“さまざまな交通手段の接続が行われる乗り換え拠点”“より良い未来に想いを込めた希望”をハートのモチーフで表現し、梅田の多彩な魅力を次世代へと繋いでいます。
―新設されるJPタワー・イノゲート大阪・うめきたグリーンプレイスについて、それぞれの魅力と役割について教えてください
「JPタワー大阪」は、日本各地のアンテナショップなどが集まる「KITTE大阪」や、演劇・ミュージカル・音楽・演芸・伝統芸能など、劇場でしか体感できないリアルな感動をお届けする「SkyシアターMBS」をはじめ、マリオット・インターナショナルと提携して大阪の駅の歴史や文化、そしてその価値を未来へ継承する「大阪ステーションホテル、オートグラフ コレクション」、貸付面積1フロア約4,000㎡、計68,000㎡となる西日本最大級オフィスなど、様々な魅力あふれるコンテンツがラインナップされています。
また、「イノゲート大阪」には、大阪の老舗や路地裏の名店から海外の有名レストランまでをバリエーション豊かに大集結させた「バルチカ03」やラウンジ、シェアオフィスなど多様な働き方に対応したサポート機能を持つオフィスなどが誕生する予定です。
ちなみに名称の「03」には、大阪で親しみを持って呼称される「おっさん(03)」の意味も込めています。「おっさん」をはじめとする、梅田で働く全てのオフィスワーカーが元気になり、大阪そのものが元気になる空間をめざします。
さらにJR大阪駅前に、約45,000㎡という大規模で高品質な都市型公園「うめきた公園」ができる予定です。そうした、世界でも類を見ない駅直結の大規模都市型公園の玄関口に、周辺オフィスワーカーや来街者の方など、JR 大阪駅周辺地域を行き交う皆様に向けて、より豊かな生活を創出する、都市型ショッピングセンター「うめきたグリーンプレイス」ができる予定です。
この施設は、店舗の周囲に外部通路を施し、周辺の緑を感じながら歩いていただけるようにしています。従来の駅ビルは天候や周辺施設の変化に左右されないクローズドのイメージが多いと思いますが、階段や広場などのオープンスペースも多く設け、公園や並木の眺望を楽しみながら、風を感じ、緑の匂いを感じられるようなこれまでにない駅ビルになると確信しています。
―大阪駅の「うめきたエリア」は、JR西日本がイノベーションの実験場「JR WEST LABO」の中心と位置づけています。具体的にどのような計画を予定していますか
既に設置されている、車種のドア位置に応じて自在に開口部が調整できる世界初「フルスクリーンホームドア」は、自信を持って発表できる実績のひとつです。
また、軽量かつ柔軟な特徴があり、ビルの壁面や耐荷重の小さい屋根、車体などの曲面といったさまざまな場所に設置できる「フィルム型ペロブスカイト太陽電池」を駅前広場に設置する予定です。これは一般共用施設への設置計画としては世界初の事例となります。ぜひ、持続可能な社会の実現に貢献する最新技術としてご注目ください。
―新ホームは、はるかやくろしおが乗り入れます。特に期待していること、アピールしたい点はありますか
今まで大阪駅に停まらなかった南方面への特急が大阪駅に停車するようになったため、関西国際空港や和歌山方面へのアクセスが格段に良くなり、到着時間も大幅に短縮されます。これにより、大阪駅周辺エリアの国際競争力並びに、街の賑わいが向上していくと予想しています。
開業前(関空・紀州路快速) | 開業後(特急) | |
大阪⇒関西空港 | 1時間7分 | 47分 |
大阪⇒和歌山 | 1時間30分 | 57分 |
―新施設や新ホームによって人の流れが大きく変わります。どのような効果が予想できますか
大阪駅の眼前にこれだけ大きな緑の空間を持つ開発はほかに類をみません。これからの大阪にとって起爆剤になる場となり、関西を牽引していくのではと期待しています。
どんどん広がる大阪駅
沿線エリア関係者からの〝期待の声〟を集めてみた
▼関西エアポート 広報担当者
20分の短縮(67分→47分)! 特急「はるか」で関西空港にダイレクトアクセス
大阪新駅ができたことにより特急はるかが大阪駅にも停まるようになり、関西国際空港から直通の特急列車でご移動いただけるようになったことで、お客さまの選択肢が増え、利便性が向上したことは非常に喜ばしいことです。
▼南海電鉄 総務広報部 広報担当者
将来、「なにわ筋線」でつながる(2031年予定)
キタエリアと当社沿線がつながることで、当社沿線の価値向上に寄与すると考えており、関西全体の経済活性化につながると期待しております。
▼東大阪市 交通戦略室 林亮介さん
「おおさか東線」で大阪東部、奈良県も便利に
この度、関西経済の中心地である大阪駅へ直結したことで市民の買い物や本市に訪れる機会の創出など、沿線地域が住居、商業及び工業全てにおいて利便性の高いエリアになることを期待しています。市域の駅周辺エリアでは、ホテルが建設中であることからも民間開発の機運の高まりを感じています。
▼大阪市北区 寺本譲区長
大阪駅がある大阪市北区から
思い出深い大阪駅で150年記念イベントの挨拶をさせていただけるなんて、こんなに嬉しいことはありません。大阪駅は歴史と共に、どんどん変遷を重ねてきました。北区もJR西日本さんとタッグを組みながら、駅を中心に人が明るく元気に盛り上がるような街をめざします。未来に夢と希望を持ち続けるような大阪でありたいと思います。この度は150周年を迎えられ、本当におめでとうございます。
(週刊大阪日日新聞WEB版より転載)
いっちゃん、新しいやつ