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年相応ってなんですか?ド派手な還暦ファッショニスタ「はる。」の、梅雨を吹き飛ばすパワーコーデ【ハイパー偏愛図鑑 Vol.07】

どや!

「もういい年だから」と、自由におしゃれを楽しむことを封印していませんか? カラフルでド派手な61歳のファッショニスタ「はる。」さんに、梅雨のジメジメを吹き飛ばすほどのパワー系カラフルコーデの極意をお聞きしました。

write:トミモトリエ
edit:人間編集部

今回の偏愛者

はる。
還暦ファッショニスタ。派手な服を愛するハッピーな61歳。本業は書店員。2019年9月に日々のコーディネートを投稿するインスタアカウントを開設したところ、話題に。Webメディア『ヘンとネン』で、希望者を変身させる動画企画「パッとしてグー!」を連載中。猫とお酒と漫画が好き。

\ドヤ/
3人の子育てを経て、アイドル沼に落ちた50代の転機

ネオンカラーのコーディネートで登場したはる。さん。

──派手なファッションに目覚めたきっかけを教えてください。 

はる。さん:実は、今みたいに派手な服を着るようになったのは、50代になってからなんです。子供が3人いるんですが、末っ子が高校に行くまでは、周りのママ友から浮かないように、地味で目立たないファッションを心がけていました。長女が生まれてすぐに大阪から奈良に引っ越したので「奈良に馴染まなければ」と、余計に周りの目を気にするようになったのかもしれません。でも、50代でとあるアイドルにハマって人生が激変。たまたまテレビで見た男性アイドルに射抜かれて、アイドル沼に落ちました(笑)

──アイドルがきっかけだったんですね……! 

はる。さん:ガーデニングと読書が趣味で、生成り色のリネンのワンピースを着て、無印良品の家具に囲まれ、休日は天然酵母のパンを焼く……そんなナチュラル系マザーだったはずなんですが、アイドルを好きになってからは、部屋も服も推しメンカラーだらけ。昼夜問わずDVDを観ながらキャーキャー騒いで、夜行バスでライブ遠征に行ったり、今までの自分どこいった状態でした。

当時着ていたナチュラル系の服(はる。さん提供)

はる。さん:そのうち、まだそこまでファンが多くないアイドルグループを追うようになって、推しとの距離感が近くなったんです。握手会で話しかけてくれたり、自分のことを認知してくれている。そうなると、美容やおしゃれに気合いが入るじゃないですか。自然と「目立ちたい」という願望も芽生えて、服装がどんどん派手に……。

──推し活による若返り効果ですね。ママ友や家族の反応はどうでしたか?

はる。さん:一気に変わったわけじゃなくて、徐々に派手になっていたので、ママ友たちは「会う度に派手になってるやん」みたいな反応でしたね。子育てがひと段落ついた頃だったので、家族も「楽しそうでええやん」と応援してくれました。アイドルオタクになってからは、SNSを通じて20代の友人も増えて、交友関係がママ友だけじゃなくなったし、時代も変わって、個性を殺す必要もなくなったんです。

はる。さんが制作した、アイドル「最高じぇねれーしょん」の衣装(2021年にメンバー全員卒業)

──確かに、時代も変わったのかもしれませんね。

はる。さん:派手になったきっかけはもうひとつあって、イラストレーター・作家として活動している長女のキシダチカと一緒に、「最高じぇねれーしょん」という女性アイドルの衣装を制作したことも影響しています。娘がデザインした衣装を、服飾専門学校出身の私が縫製して。彼女たちと触れ合ったことで、自分が好きな世界観を再認識しました。

漫画家としても活躍する、作家・イラストレーターの娘・キシダチカさんと

はる。さん:娘たちとは、美容やファッションの話で盛り上がる友達みたいな関係。長女とはファッションの好みも一緒なので、服をシェアしています。リンクコーデして出かけたり、一緒に買い物に行ったり。「似合う」って褒めてくれるんですよ。

\ドヤ/
毎晩ディスコ通いの服飾専門学校生……奔放に生きた青春時代

はる。さんのお気に入りショップ「ニュースタア」にやってきました

──若い頃はどんなファッションだったんですか?

はる。さん:「COMME des GARCONS」や「Y’s」が好きで、全身真っ黒のモード系ファッションでした。「KENZO」が流行った時代はカラフルな服を着たり。もともと洋服が好きで、服飾デザインの道に進むために、高校卒業後は大阪モード学園に入りました。でも、途中で挫折してしまったんです。当時は80年代バブルのディスコ全盛期。毎日夜遊びばかりして、あまり学校に行かなくなっちゃって。

──その後どんなお仕事に就いたんでしょうか?

はる。さん:親はもともと服飾の学校に行くことに反対していたので「勉強しないなら就職しなさい」と怒られ、19歳の時に中退して、親のコネで住宅設備機器のメーカーに就職しました。4年くらいショールームで商品案内をする仕事をしていたんですけど、親との折り合いが悪くて家を出て……半年くらい海外で生活したり、三重県のスナックで働いたり、奔放に生きてましたね(笑)

奔放に生きていた19歳のはる。さん(はる。さん提供)

──そこからナチュラル系の母になるまでが、全くつながらないんですが……。

はる。さん:海外に行く時、家出同然で実家を出たんですけど、親から「おばあちゃんの介護が必要やから帰ってきてくれへんか」って連絡があって。それで、しばらく実家に帰っておばあちゃんの介護をして、最期を看取って……。いつまでもフラフラしてるのもだめだなって思って、派遣社員として空調機メーカーに入ったんです。そこで、同僚の紹介で夫に出会い、結婚して、出産して、奈良に移住し、ナチュラル系マザーに変貌しました(笑)

──なるほど……。周りに合わせることは苦ではなかったんでしょうか?

はる。さん:苦に感じたことはないですね。トラブルもなく、むしろ、めちゃくちゃ楽しんでました。奔放な過去の話はせず「普通の母」を演じて、「どんだけここに馴染めるか」というのをゲーム感覚でやっていた感じ。根っからのポジティブ思考なんだと思います。

\ドヤ/
「いい年なんだから」の呪縛を解く、歩くパワースポットになりたい

──インスタグラムでコーディネートを投稿するようになったのはいつからですか?

はる。さん:2019年の9月ですね。インスタグラムでかっこいいシニア女性が「インスタグランマ」として注目を浴びるようになって、自分も大阪出身のド派手ママとして自分のファッションを発信してみたいなと思ったんです。「お母さんインスタグラマーになりたいねん!」って娘たちに相談したら、いろいろアドバイスをくれて。

長女のキシダチカがX(旧Twitter)で「50代の母がインスタグラムでコーディネートの記録をはじめた」という宣伝をしてくれて、その投稿が拡散されて、すぐにフォロワーが増えました。Webメディアや新聞の取材を受けたり、『60歳からの生き方図鑑』という書籍に掲載されたり。

最近バズった投稿は1,700万インプレッション超え

── 一気に世界が広がった感じですね。どんなフォロワーさんが多いんですか?

はる。さん:同世代の方もいるけど、20代や30代の若い世代のフォロワーさんが多いですね。質問を募集すると、「本当はフリフリのガーリーな服を着たいけど、周りの反応を気にして着られない」とか「いい年してんねんから、もうちょっと年相応の服を着たら?って彼氏に言われた」って、年齢を気にして好きな服が着られない悩みを持っている人がたくさんいて。25歳くらいになると「もう若くない」って考えになるんですよね。結婚しなきゃとか、早く子供を産まなきゃ、そろそろちゃんとしなきゃ……って。

──そういう人たちからすると、歳を気にせず好きな服を着る姿に勇気づけられるんでしょうね。

はる。さん:「年相応ってなんですか? 誰が決めてるんですか?」って思いますね。「若作り」って言葉もあるけど、私は「若く見られたい」と思ってコーディネートしてるわけじゃない。写真を投稿するときも、明るくしたり色の補正はするけど、シワを消すみたいな不自然な加工はしません。好きな服を着ているだけで気分が上がって表情も明るくなる。自分らしい服を着ることが大切だと思います。

──確かに、内面から出る若々しいエネルギーはアプリでは補正できないですもんね。

はる。さん:みんな、「年相応」という呪いにかかって、自分で自分を老けさせてしまっていると思うんですよね。私は、そんな呪縛を解く「歩くパワースポット」になりたい。服が好きだからこそ、服は人を元気にするものであってほしい。人生の重みを感じさせる名言が言えるようなタイプではないけど、年齢関係なく「めっちゃ楽しんでるな」と、会う人・見る人を少しでも元気にできたら。

\ドヤ/
コーディネートのポイントは、直感と引き算と少しの余計

──いつもどこで服を買っているんでしょうか?

はる。さん:今日着てるメッシュのインナーは「MAISON SPECIAL(メゾンスペシャル)」、靴は「grounds(グラウンズ)」、カバンやアクセサリーは「ニュースタア」で買ったものです。古着屋やプチプラ系のブランド、海外サイトで買い物もします。私は小柄なので、キッズ服も買います。「それって若い子向けのブランドじゃないの?」みたいに言われるけど、そういうのは気にしません。

──服を選ぶ基準があれば教えてください。

はる。さん:よく聞かれるんですけど、説明が難しいんですよね。呼ばれる感じです。昔から第六感が強いというか、他の人には見えないものが見えてしまうタイプで。購入するときも、視界に飛び込んできて、吸い寄せられる感じ。ビビビっとくるんです。それで、頭の中でそれを着ている自分を想像して、それがバチっとハマったら買います。

groundsのORCA desert neon × nude pink
インナーはMAISON SPECIALウィメンズ ルクア大阪店、ネックレスはニュースタア大阪で購入(※現在は取扱なし)
ニュースタア大阪で購入した「SACKVILLE(サックビル)」のメッシュバッグ

──ファッションのバランス感覚はどうやって身につけましたか? すごく計算されていますよね……。

はる。さん:計算はしていますね。足し算ばっかりするんじゃなくて、ちゃんと引き算をする。柄と柄合わせてもまとまるように、頭でシミュレーションして。でも、綺麗にまとまりすぎないように、あえて余計なものを付け足したり。過去の写真を見返したりして、「このアイテムはいらんかったなあ」と反省したりしています。

──派手な服を着てみたい人にアドバイスするとしたら?

はる。さん:「派手なものを着たいけど、ハードルが高い」ってよく言われるんです。そういうときは、「まずは小物からどうですか?」って勧めます。靴下やアクセサリーをカラフルにしたり。全体は落ち着いたコーディネートだけど、カバンや靴だけ派手にしてみるとか。

ニュースタアの人気商品「Lagimusim(ラギムシム)」のメッシュエコバック

でも、無理に派手にしなくてもいいと思うんです。黒が好きなら黒を着たらいい。「年相応に」「無難に」という理由で選ぶのではなく、これを着ていたら気分が上がる、楽しくなる。そんなアイテムをひとつ持つだけで気分は変わると思います。梅雨の時期はカラフルな傘で気分を上げるのもいいかも。

\ドヤ/
服でパワー拡張。若い頃はよかった……ではなく、今を生きる

──人生やファッションのテーマはありますか?

はる。さん:常に「強くありたい」って思っています。カラフルな服は、自分の中にあるパワーをさらに拡張してくれるもの。オーラのようなものだと思っています。単純に「黒が似合わなくなってきた」っていう理由もあるんですけどね。昔は黒を着こなせていたけど、黒は肌に透明感がないと難しいと思っていて。ネオンカラーは肌を明るくしてくれる効果があるので、顔を明るく見せるためにもいいんですよ。でも全身ネオンカラーだとしんどいので、寒色と合わせたり、透けるアイテムと合わせて、ちょっと抜け感を作るのがポイントです。

Wpc. FLAGSHIP SHOP LUCUA 1100店の「チューリップアンブレラ」3,300円(税込)

──最新の流行アイテムも積極的に取り入れていますよね。

はる。さん:そんなに流行は気にしてないつもりなんですけどね。でも「若い子の流行だから」と避けようとも思っていないです。フォロワーさんから「最近再流行している80年代のスタイルを、懐古するのではなく今の時代にちゃんと落とし込めてるのがすごい」って言われて気付いたんですが、確かに昔を懐かしんで選んでいるというより、若い子たちと同じような感覚で80年代の要素を取り入れたりしている。青春時代を引きずって生きてるんじゃなくて、今の時代に合わせてる。シンプルに、今を生きていますね(笑)

──これからの夢や展望はありますか?

はる。さん:60歳になった時、すごく嬉しくて。「還暦という冠」がついたことで「自由に生きるぞ」という気持ちが高まっています。歳を重ねるにつれ、妻、母、女などのいろんな役割から解放されて、あとは楽しむだけ。今は、シニア向けの青文字系雑誌を作るのが夢ですね。

写真家・木村華子さん撮影、娘のキシダチカさんがデザインしたコーディネート記録

はる。さん:若い子たちから「無難な服ばかり選んで、今までファッションで冒険したことがない」「どんな服を着ればいいのかわからない」って相談も多くて。それで、Webメディア『ヘンとネン』で、私が服を選んでコーディネートする「パッとしてグー!」という動画連載をスタートしたんです。誰でも彼でも派手な服を勧めるわけではなくて、その人と相性がよくて、気分が上がる服を選んでいます。男女問わず、ファッションで変わりたい人募集中です!

──ありがとうございました!

ニュースタア大阪

住所:〒530-8558 大阪府大阪市北区梅田3-1-3 ルクア イーレ 2F
営業時間:10:30~20:30
定休日:ルクア大阪に準ずる
お問い合わせ:06-6151-3104

Wpc. FLAGSHIP SHOP LUCUA 1100店

住所:〒530-8558 大阪府大阪市北区梅田3-1-3 ルクア イーレ 7F
営業時間:10:30~20:30
定休日:ルクア大阪に準ずる
お問い合わせ:06-6151-2156

この記事を書いた人

トミモトリエ
1976年東京生まれ、大阪在住。株式会社人間所属、人間編集部編集長。人間を編集する編集者であり、変を集める変集者。偏愛者を愛し、大阪に生息する超生命体を研究している。時代を蛇行する超生命体マガジン『ヘンとネン』で「超生命体の偏愛図鑑」更新中。年間400食カレーを食べるスパイス狂。