大阪・梅田で感じる「万博レガシー」を深堀り
2025年の一大イベントだった「大阪・関西万博」。今も大阪各所で「アフター万博」を楽しめるイベントや展示が展開され、その盛り上がりは衰えない。また、大阪府・市は「万博レガシー」を引き継いで大阪をもっと発展させる、とそれぞれ目標を掲げている。そして、JR大阪駅周辺エリアにも「万博レガシー」は引き継がれている。
1970年大阪万博は、現在の“当たり前”のスタート地点だった
過去を振り返ると、「万博初/発」が現代に引き継がれているものは多い。
例えば、建築や設備では「動く歩道」や「モノレール」が登場。また、海外観光客からの評価が高い「温水洗浄便座」も実は大阪万博から。日本で初めての大がかりな情報システム(LAN/データ通信システム)を完備したのも万博で、入退場の正確なチェックから催し物の検索まで、膨大な情報をやり取りしていた。あらゆる技術の実証実験の場として、万博会場やその周辺で運用され成功した結果、現代に活用され続けている。

食生活の広がりも大きい。「ファストフード」の普及は、大阪万博のアメリカン・パーク内に「ケンタッキー・フライド・チキン」が初上陸したのがきっかけ。
また、「ロイヤルホスト」で有名なロイヤルが、当時開発したての「セントラルキッチン(集中調理施設)」を活用して万博に出店し、期間中の売上高1位に。これをきっかけに全国展開し「ファミレスチェーン」文化が始まった。缶コーヒーやフランスパンも大阪万博で爆発的にヒットし、全国の家庭に広まった。
万博が「現代」の入り口となり、量・質ともに物質的な豊かさが広がった。今や当たり前となっている文化は、実は50年ほど前の日本では最新だったのだ。
今回の万博会場でも、関西を中心とした様々な企業による挑戦的で新しい取り組みを頻繁に目にすることができた。その技術やサービス、商品だけでなく、それらに宿るストーリーや思いは、万博内だけで完結するのでなく、「万博レガシー」として引き継がれて、新しい社会の一部になっていく。
大阪ステーションシティ周辺に拠点を置く企業に、それぞれの「万博レガシー」を伺った。
大阪・関西万博のユニフォーム7万トンをリサイクル(伊藤忠商事)
アパレル業界では長年、衣類の大量廃棄が課題となっている。業界をより持続可能なものにするべく、伊藤忠商事では2019年ごろから様々な形でリサイクル事業を展開している。
2023年からスタートした「ARChemia(アルケミア)プロジェクト」は、回収した使用済み衣類と使用済みプラスチック製品を混ぜて「ガス化」処理し、水素や炭酸ガスなどの化学品原料として再資源化する、化学メーカーのレゾナックとの取り組みだ。
従来、同社が進めていた繊維由来のリサイクルポリエステル「RENU」プロジェクトでは、要らなくなった衣料品や生産時に出た裁断くずなどを原料として、繊維から繊維へと生まれ変わらせることができる。ただ、リサイクルの対象はポリエステル100%のものに限られており、衣類全体の約1割しか対応できないという課題があった。アルケミアプロジェクトでは異なる複数の素材が混ざった衣類にも対応できる。「混紡材」は衣料の約8割を占めるので、そのインパクトは大きい。

その技術が大きく発揮されたのが、万博ユニフォームのリサイクル。万博の大きなテーマの一つとして「循環」がある。設備や建材も再利用が進む中で、万博スタッフのユニフォームの行方についても検討された。一つ一つ素材や作りが大きく異なり、またかなりの量があったが、その内の7トンをまとめて引き受けることができた。
アルケミアプロジェクトは技術としては確立しているものの、まだまだ知られていない。今後はユニフォームを着ている企業や各アパレル企業に働きかけていき、この循環をさらに普及していく考え。担当の伊藤忠商事 繊維カンパニーの仙元惇史さんは「まず消費者一人一人の意識が変わることが大切」と語っている。
これからの大阪の建築に新しい風を(大和ハウス工業)
万博では数多くのパビリオンと会場内施設を手がけた大和ハウス工業。パビリオン建設は制約や条件が多く、難しい現場だったという。それを実現するためには、万博以前から取り組んでいた環境問題への取り組みのノウハウやアイデアの力が欠かせなかった。
パビリオン建設を進めるための「万博推進室」には、年齢・部署に関わらず、多様な人が全国から集まったそう。それによって新しいアイデアが出て、新しい手法や技術が生まれた。
例えば、同社が手掛けたパビリオンの一つ「BLUE OCEAN DOME(ブルーオーシャン・ドーム)」は、3つのドームのうちの一つに、世界で初めて炭素繊維(カーボンファイバー)で補強・強化されたプラスチック「CFRP」を主構造として建築物に使用した。他の建物でも竹の集成材や紙管などを主に使い、サスティナブルな建築を行った。

「万博会場ではあらゆる課題を乗り越えながら、普段は経験できないような期間限定の建物を作りました。環境に配慮した建築が今後求められる中で、これらの技術を長く残る建物にも生かしていけたら」と、当時「万博推進室」の室長を務めていた小川博明さんは意気込んでいる。
そもそも、同社が万博に関わったのは「大阪の企業として、万博を盛り上げないと!」という使命感から。万博を盛り上げることで、夢洲の周辺地域、ひいては大阪全体を盛り上げたい、という思いで参画した。その思いは今も同社内で引き継がれ、7月にオープンする「淀屋橋ゲートタワー」や、梅田エリアでいえば「大阪マルビルプロジェクト」に携わり、アフター万博の大阪をもっと発展させる役割を担っている。
■BLUE OCEAN DOME(ブルーオーシャン・ドーム)紹介ページ/大和ハウス工業
万博のテーマの一つである「循環」に共感し、多様性を大切にしながら、持続的な社会を作っていく。その営みは万博前から少しずつされていたが、万博という大規模イベントを通じて、社会の「当たり前」にしていくための大掛かりな「実験」ができた。その思い・考えをこれからも続いて形にしていくことが「万博レガシー」といえるだろう。
そしてそれは大阪ステーションシティ内の施設にも見受けられる。
会社帰りに自分の健康状態をチェック 「DotHealth OSAKA」
「DotHealth OSAKA」とは、“ヘルスケアとの接点”を毎日の動線上につくろうという実証実験の場。JR大阪駅構内に拠点を構え、日々の健康状態を測れる「カラダ測定ポッド」を利用できる。また、同駅うめきた地下口、天王寺駅、岸辺駅にもポッドを設置。万博会期中にはポッドが「大阪ヘルスケアパビリオン」に設置され、予約が取れないほど多くの利用者でにぎわった。パビリオンが盛況なのもあり、万博期間中は「DotHealth OSAKA」にも行列ができた。

実はこの取り組みは、JR西日本による「ステーションヘルスケア構想」として万博以前から練られていた。PHR(パーソナルヘルスレコード:個人の健康情報)を活用することによって、手軽に体のささいな変化を知り、自分のペースで健康データを自分で管理する。そのような「セルフヘルスケア」の向上を、毎日の通勤・通学という“日常”がある駅ナカという場で実現できないか、という構想の具現化に向けて検討を重ねていた。
そして万博をきっかけに「カラダ測定ポッド」を誕生させることができ、大きくプロジェクトが前進。
「日常の中で『DotHealth』を自然と目にすることで、自身の健康に意識を向けるきっかけが生まれ、健康への 『最初の一歩』を踏み出すハードルを下げられればと考えています」と事業担当の畑康介さん(JR西日本)。現在はサブスク形式(2ヵ月税込1,320円、6ヵ月税込3,300円)で利用できる。

DotHealth OSAKA
大阪市北区梅田3-1-1 JR大阪駅構内(中央コンコース・日本旅行Tis大阪横)
営業時間 12:00~19:30(全日)
万博会場での「ドキドキ」をもう一度体験したい!
万博の「ワクワク」そのものを思い出せるスポットやイベントも忘れてはいけない。
大丸梅田店にある「EXPO2025 オフィシャルストア 大丸梅田店」は閉幕後も引き続きオープンしており、大阪・関西万博公式キャラクター「ミャクミャク」のグッズがまだまだ展開されている。

閉幕後も「ミャクミャク熱」は冷めず、毎週のように新アイテムが入荷されているという。万博会場で販売されていたものも、たまに復活して販売されているので要チェック。特に今オススメのアイテムを紹介したい。
※取材時点の情報であり、公開時点では売り切れの場合があるのでご了承ください。
①ぬいぐるみ・キーホルダー
いろんなアイテムの中でもずっと人気なのが、ぬいぐるみとキーホルダー。特に立体的なものがよく選ばれ、入荷してもすぐ売り切れることが多いそう。蓄光式など、新しいバージョンも続々登場している。


②お菓子
大阪土産として定番化してきているのか、お菓子類もよく選ばれる。ミャクミャクのイラストが何パターンかあしらわれたゼリー缶はコンプリートしたくなる。プリンやクッキーも購入客が多い。


③ミャクミャク&トゥンクトゥンクコラボグッズ
2027年開催のGREEN×EXPO 2027に向けて、公式マスコットキャラクターの「トゥンクトゥンク」とコラボしたグッズも少しずつ入荷している。トゥンクトゥンクの認知度がだんだん高まり、買い求める人も増えてきたという。手に入れるのは今のうちかも。

EXPO2025 オフィシャルストア 大丸梅田店
大阪市北区梅田3-1-1 大丸梅田店 6F 西エスカレーター横
電話番号 050-1780-0000
営業時間 10:00~20:00(大丸梅田店に準ずる)

さらに、万博会場で見かけたCELL ART(セルアート)がJR大阪駅5F「時空(とき)の広場」に登場。10月13日(火)まで設置される予定だ。
万博会期中は「サテライト会場」として万博を盛り上げていた時空の広場。随時イベントやワークショップが催され、「ミャクミャクカラー」やたくさんの国旗があしらわれた装飾に会場全体が包まれた。サテライト会場を担当していた眞野新吾さん(JR西日本ステーションシティ所属)に、取り組みへの思いを語ってもらった。

Q. 会期期間を通して、サテライト会場の様子はどうでしたか?
A. 会期中の「万博サテライト会場」の認知や盛り上がりは、会期の終盤に近付くほど多くの方に足を運んでもらい、国内だけでなく海外の方にも立ち寄ってもらえるようになりました。特に会期終盤、夢洲の本会場が混んで入場が困難な時期は「気軽に万博を感じられる場所」として、万博「サテライト会場」の役割が果たせたと感じています。
Q. 万博を経て、感じたことは?
A. 共通の目的に向けてひとつになっていくことの良さ、ですね。「万博」という大きな的に向かって様々な企業や行政が連携し、例えば駅が整備されて移動が便利になるなど、良い効果が生まれました。大阪を中心に関西全体の機運が“前向き”に感じられたのもよかったです。
また、万博をきっかけに大阪へ足を運んでくれる府外の方が増えたこともうれしいです。これをきっかけに、大阪へもっと気軽に遊びに来てくれたらうれしいですね。「万博」を一過性のものとして終わらせず、引き続き「大阪の玄関口」としての役割を果たせるよう、大阪・関西を盛り上げていきます!

ずっと忘れない、大阪・関西万博への熱狂
そして「万博レガシー」と、大阪ステーションシティ15周年に対する想いの結晶として、5月6日にはイベントが実施された。
限られた人にしか事前案内がされなかったにもかかわらず、当日は300人以上がミャクミャクを一目見るために集まり、事前抽選の当選者には2ショットタイムが設けられた。撮影の合間にも、立ち見の来場者とミャクミャクがコミュニケーションをとる場面もあり、万博閉幕から半年以上経つにもかかわらず、人気が衰えない様子だった。
多くの人の心に残り続ける大阪・関西万博。これからも大阪のあらゆる場所でその芽に花が咲くのを見届けたい。


いっちゃん、新しいやつ