OSAKA STATION CITY GUIDE

do-ya?[ドーヤ?]

イルミネーションデートの必勝法を学説的に考えてみた

どや!

writer:大宮由布子
photo:臼井貫太

冬の定番デート、イルミネーション。夜にきらめく光は、人々をロマンチックな気持ちにさせます。……いや、冷静に考えてみましょう。どうして私たちは、ただの電球が集まったものに、“ロマンチック”なんて感じてしまうのか、不思議じゃありませんか?どうしてこんなにも人々はイルミネーションにひかれ、毎年カップルたちはこぞってイルミネーションを観にいくのでしょうか?

そこで建築・都市の光環境や空間心理の専門家、東京都市大学の小林茂雄教授に、イルミネーションが人にもたらす心理的作用について取材を実施。「照明的観点から見た“親密度爆上げ“冬のおすすめイルミネーションデートプラン」 を真面目に考えてみました。

後半はSNSで人気のカップルインフルエンサー・カンタ & マユコさんに、大阪ステーションシティにて実際にそのデートプランを試してもらい、“ふたりは本当にステキな時間を過ごせるのか?”を検証します!

── そもそも、どうして人はイルミネーションを観にいくのでしょうか。

小林さん:人間というのは“光にひかれて集まってしまう生きもの”なんですよ。

── 虫みたいな言い方ですね。

小林さん人工照明がなかったころ、人間にとっては太陽の光だけが頼りでした。光のおかげで食べものを見つけられたり、歩けたり、自分の身を守ったり、まさに光の存在は生きることに直結していた。光があるとそこに集まり、暗闇だと不安に感じるのは、そのころから人間にインプットされた性質なんです。

── なるほど。でも、今じゃ電気もあって24時間明るいなかで過ごせますし、暗闇でもそんなに危険じゃないとわかっていますよね。人間の本能って変わっていったりしないんですか?

小林さん:何十万年という人類の歴史と比較すると、電気による照明が実用化されてまだ150年ぐらい。それまではずっと太陽や火の光だけで生活をしてきたわけで、残念ながら人間の体はまだそこまでアップデートできていません。

── 進化するにはあと数万年は必要ってことか……。人類は光が大好き、ということはわかりました。ですがどうしてイルミネーションはカップルで観にいくもの、という印象が強いのでしょうか。

小林さん:“暗い場所にいて明るい光を見る”というのは、親密度をあげるのにとても良い効果があるというデータがあります。なのでイルミネーションや夜景を観にいくのは、デートに最適なコースなんです。

── イルミネーションのことを“暗い場所にいて明るい光を見る”と言われたら、ロマンチックのかけらもないですね(笑)。

小林さん:基本的には暗ければ暗いほど、人と人との距離は近づきやすいと言われています。実際に行われた実験でも、暗いほうがお互いに顔を見つめ合う時間が長くなったというデータがあります。カップルや女性同士の場合に顕著に結果が出ていますね。

── どうしてですか?

小林さん:ひとつは、人間は暗闇が不安なので、誰かと一緒にいると安心感を感じるということ。加えて、暗いと相手の顔や様子が確認しづらく、それらの情報をおぎなうために、顔を見る時間が長くなったり、物理的に顔を近づけるようになることがあげられます。

── 見えにくいから、しっかり見ようとするんですね。

小林さん:暗いと相手に近づき、より凝視する。積極的に相手を見ようとすることで、会話の内容も伝わりやすくなります。結果的に相手に対する興味が強くなり、関わりが親密になっていくんです。

小林さん:明るさにより、話し方や話す内容も変化します。明るい場所だと大きな声でテンポよく話す傾向があり、活発な議論やアイデアを出し合う時に向いています。一方、暗い場所では自然と声は小さくなり、ゆっくりと喋るようになるので、打ち明け話や自分の心を開示するような話に発展しやすいんです。

── 光によってコミュニケーションの方法が変わってしまうんですね。

小林さん:光による人間への心理的影響は非常に多く研究されていて。たとえば色温度。人は昼間は白い光のほうが落ち着き、夜は暖色系の色合いのほうが落ち着くというデータが出ています。

── たしかに“夜はオレンジ系の照明が良い“と聞いたことがあります!でも、どうしてですか?

小林さん:太陽の光と同じだからです。太陽の光は、昼間は赤も緑も青も全部の色が入っていて、白くて明るいんです。それが夕方になると暖色系の光に変わっていく。本能的に昼の光と夜の光の色合いがインプットされているため、暖色系の色は、よりリラックスできるんです。イルミネーションであれば、暖色系の光は安心を与え、寒色系は非日常的な演出ができる、というわけです。

小林さん:あとは、光の高さや分布もコミュニケーションと関係があります。一般的に照明は、シーリングライトのように天井から均一に部屋を照らすケースが多いですよね。活動的な時には適していますが、リラックスする時には目線の近くか、目線の下にある方が良いです。それと部屋全体が均一な明るさより、明暗がある空間の方が親密な行為が行われやすいです。

── テーブルや足元に光がある、ぐらいのものが良いんですね。

── では、ここからは具体的に、光の効果を利用して、イルミネーションデートで親密度を最大限にする方法を教えてください!

小林さん:まず、イルミネーションを観るときは、自分たちに光が当たらない場所、というか……できるだけ暗い場所に行ってください。

── さきほど話した「暗ければ暗いほど仲が深まる」の法則があるからですか?

小林さん:はい。それに加えて、人間は自分の姿が誰かから見られてるかもしれないと思うと、心を開きにくいというデータがあります。これは特に女性のほうが顕著な結果が出ていて。私たちの研究室でも、横浜の港にいるカップルを観察し、どういった場所だと密着度が上がるのかを調べたのですが。

── 彼氏・彼女がいないときにやると、泣けてきそうな実験ですね。

小林さん:抱き合ったり手を繋いだりといった行為がどのような場所で多く見られるのかというと、後ろから見られないという安心感がある場所、自分の周囲5メートル以内に人がいない場所でした。

小林さん:あとは、水面に光が映り込むような場所が近くにあるとさらに良いですね。

── めちゃくちゃピンポイントで攻めてきますね。

小林さん:たとえば神戸のハーバーアイランドのあたりや、京都の鴨川などはデートスポットとして有名ですよね。水面に反射する光というのは、“揺らいでいる光”なのがポイントです。“揺らいでいる光”というのは、人間は30分でも1時間でもずっとみていられる。波があって揺らいだ光や、樹木につけられていて風によって揺られるイルミネーション、明暗が不規則である光などを見るとより良いとされています。

── 残念ながら大阪駅周辺で水面を探すのは難しそうですね。めちゃくちゃ強風の日を狙うか、水をぶちまけて水たまりをつくるしかないのか……。ちなみに、川や海がないような場所でも簡単に“揺らいでいる光”を見る方法はあるのでしょうか。

小林さん:自然物にこだわらなくても、たとえば観覧車や電車なども動いている光と言えます。人が動いているような不規則な光にも、人をひきつける効果があるんです。

── それなら大阪駅周辺でもいろいろありそうな気がしてきました!

── ちなみに、光の観点からみた、デートでのお店選びのポイントはありますか?

小林さん:親密度をあげる意味では、室内でも、まずは暗いところですね。10ルクス以下がベストなのですが、日本では風営法や条例で認められていないところが多いので難しくて。ヨーロッパのレストランでは10ルクス以下のところはたくさんあるんですが。

── 10ルクスというのはどの程度の暗さなんですか?

小林さん:メニューの小さな文字が見えないし、肉の焼け具合もわからないぐらいです。

── それは……。別の意味でドキドキしそうですね……。

小林さん:ヨーロッパでは料理がどう見えるかよりも、その空間にどれだけ心地よい雰囲気が流れているかを重視しているんです。日本ではたいていの飲食店は100ルクス、ファーストフード店は500ルクスくらいです。日本でも50ルクスくらいのお店ならあります。さらにいえば、ペンダントライトなどでテーブル一つひとつを照らしているような、明暗のあるお店がベストです。

── キャンドルがテーブルに置いてあるお店なんかは、良いってことでしょうか。

小林さん:“揺らいでいる光”でもあるので、非常にポイントが高いですね。テーブルの上のキャンドルライトは、光が目に写って目がキラキラするという効果もあります。相手の顔が美しく、魅力的に見えるような光が大事です。

── ロマンチックだな〜というものにはきちんとした理由があったんですね。

── 具体的にどこの席に座ると良いというのはありますか。

小林さん:一番は窓際ですね。キラキラした光がたくさん広がる夜景が見えるとベストです。その次は壁際。理由は先程の通り、誰かに見られていると感じると落ち着かないので。なので少なくとも一方向は、自分たちだけの場所があるほうが良いですね。

小林さん:ただ、そういう意味もある一方、周辺にカップルが複数いることが、メリットにつながるパターンもあるんです。

── え、さっきと言ってることが違うじゃないですか!

小林さん:京都の鴨川で、等間隔にカップルが座っていくというのがありますね。隣のカップルが密着すると、隣のカップルも密着しだすというのが研究でもわかっていまして。なので、同じようなカップルの人がいるお店を狙うと、雰囲気が盛り上がりやすいでしょう。

── ちなみに、個室はデートに向いているみたいなことってよく言われがちだと思うのですが、実際どうなんでしょう。

小林さん:もちろん熱愛中のカップルでしたら完全に自分たちのプライベート感があるほうが良いのかもしれません。ですがカップルになりたてや、カップルになる直前ですと、個室は意外と心理的ハードルが高いのではないでしょうか。まったくの密室だと“まわりの環境を見て楽しむ”ことができなくなってしまうので、決して居心地が良いわけではありません。人は、ある程度はオープンに外の存在を感じられる場所のほうが、リラックスする傾向にあるので。

── それは少し意外でした!でも言われてみればたしかに。

── ちなみに、小林さんは光だけではなく、音楽についても研究されているんですよね。音に関するお店選びの条件はありますか?

小林さん:明るい場所にあったBGMと暗い場所に合ったBGMがあります。リズムの違いなんですが、BPMが80から90のゆっくりとしたテンポの音楽が流れていると親密な会話をしやすいんです。それと音量は60〜65デシベル、小声で話をするぐらいの音ですね。

── 数値が細かすぎる!お店の人に「この曲かけてください!」とプレイリストを渡すしかないのか?

さて、ここからは、大阪ステーションシティにて開催中のイルミネーションイベント「Twilight Fantasy」 を舞台に、小林さんに伝授していただいた“イルミネーションデートの極意”を詰め込んだデートプランを人気カップルインスタグラマー・カンタ&マユコさんに実践していただきました。

待ち合わせは、大阪ステーションシティ5Fにある「時空の広場」直結の大階段で。マユコさん「いろんなところにクリスマスの飾りがあって、待ってるあいだにもテンションが上がりますね」
まずは予約していたお店に行く前に、大阪駅周辺を軽く散歩。できるだけ暗がりの道を通ることを意識して

Check!

  • できるだけ暗いスポットから光を鑑賞する
  • 水面に映った光や観覧車・電車・人の動きなど、“揺らいでいる光”を多く見る

食事は、ノースゲートビルディング28Fにあるフレンチレストラン、ラグナヴェールプレミアへ。落ち着いた雰囲気の店内で、20〜30代のカップルが特別な日のディナーにと訪れることも多いのだとか

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  • 自分たちと同じような雰囲気のカップルが多くいる場所に行く

お店は照明が抑えられており、ビル街の夜景の美しさが際立っている。カンタさん「夜景をみてると飽きないな~。話題のきっかけにもなりますね」

Check!

  • 夜景が見える席に座る(なければ壁際の席でも可)

店内の明るさも測定しておこう。デフォルトだとやや明るかったため、特別にいちばん暗く設定してもらったところ16ルクスとの数字が。それでも相当暗いので「ヨーロッパにあるらしい10ルクス以下のお店ってどれだけ暗いんだ……?」とあらためてざわつく一同

Check!

  • お店の明るさが50ルクス以下に抑えられている

マユコさん「暗くて落ち着くし、ろうそくの明かりで料理もすごくおいしそうに見えます。暗いとふたりの会話に集中しやすい気がしますね」
「揺らいでいる光を見る」という条件をここでも達成

Check!

  • ペンダントライトやろうそくなどで、室内に明暗の差がある
  • 水面に映った光や観覧車・電車・人の動きなど、“揺らいでいる光”を多く見る

ここで店内BGMのデシベルも測定したところ、87.6とちょっと大きめだった。BPMは80ちょっとで、条件クリア!

Check!

  • BPM80~90の曲が、60〜65デシベルの音量で流れている

席の間隔もばっちり

ラグナヴェールプレミア レストラン

住所/大阪市北区梅田3-1-3 大阪ステーションシティ ノースゲートビルディング28F

電話/06-6341-4433

営業時間/ランチ:11:30 ~ 15:00(L.O 13:30)、ディナー:17:30~22:00(L.O.19:30)※週末は貸切の場合がございますので詳細は店舗までお問い合わせください。

休み/土日祝日※ご結婚式やご宴席の受注状況により、営業させていただく場合もございます。詳しくはお電話にてお問い合わせいただきますようお願い申し上げます。

https://premier.lagunaveil.com/restaurant/

ムード満点のディナーを終えて、イルミネーションを観に、再び時空の広場へ。

時空の広場にはふたつのツリーが。マユコさん「ライトの種類で全然印象が違いますね。たしかに暖色のほうがなんだか落ち着くかも。見比べられるのはなかなかなくて新鮮!」

Check!

  • 安心感を求めるなら暖色系、ドキドキを感じたいなら寒色系の光

カンタさん「大阪駅に、こんなイルミネーションがあるなんてしらなかったです。梅田ってどこも人がいっぱいなイメージなんですけど、ここはすごく落ち着いてるし、穴場ですね」

Check!

  • ほかの人とは、5メートル以上間隔をあける

少し体も冷えたので、最後は大阪ステーションシティ5F 「時空の広場」にある、「バール・デルソーレ」へ。テラス席ならぬ、テラスこたつでほっこりとカフェタイム

バール・デルソーレ 大阪ステーションシティ店

住所/大阪府大阪市北区梅田3-1-3 大阪ステーションシティ5F 時空の広場

電話/06-6485-7897

営業時間/9:00 ~ 23:00(L.O 22:30)

休み/なし(1月1日を除く)

https://www.delsole.st/shopinfomation/station_city/

──  “学術的観点からみた最高のイルミネーションデート”、いかがでしたか?

マユコさん「普段のデートとは違っていて新鮮でしたね。お食事をしたお店では、暗い分やっぱりふたりの空間という感じがしました!音と明るさが変わるだけで会話の内容も変わるんだなというのが驚きでしたね」

カンタさん「BGMも改めて意識してみると、たしかに少しあるほうが落ち着くし、ほかの人の会話が聞こえなくて、ふたりで楽しむことに集中できました。音楽がうるさすぎても気が散っちゃうし、ホントちょうど良かったな」

マユコさん「実はイルミネーションを観にいったりは普段はあまりしなくて……」

カンタさん「人混みがすごかったりするしね。でも今日は、程よい人通りでゆっくり観れてすごく良かったです。のんびり会話しながら歩けて、癒されました」

マユコさん「会社の帰りとか、買い物の合間にいけたりするのもうれしいよね」

──  今後にいかせそうなところはありましたか?

カンタさん「色んな人に言いたくなる知識がいっぱい増えたなと思います。デートの予定がある子には“デシベルは〇〇ぐらいが一番良いねんて“とアドバイスもできるし」

マユコさん「おうちでも実践できそう。キャンドル炊いて、音楽もちょうど良いテンポをチョイスしたりして。特別な時にやってみたいな」

カンタさん「デシベルを図るアプリとかも、さがしたらありそうやんな」

マユコさん「それおもしろそう!明るさも測ったりして。ライトは暖色系で決まりやね」

── カンタさんがデートの際に気をつけていたことはありますか?

カンタさん「なんやろう……」

マユコさん「デートの下調べはよくしてくれていましたね。“おすすめのカフェにいって、そのあとは〇〇で買い物して”みたいなスケジュールを立ててくれたり、お店も3つぐらい候補を挙げて聞いてくれたり。映画のチケットを先に買っといてくれていたこともありましたね」

カンタさん「準備はあると良いよね。ちょっと前もってチェックしたりとかね。たとえば、今日教えてもらったポイントが抑えれるか、事前に下見なんてできたら完璧かな」

カンタ&マユコさんInstagram

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2022年冬、3年の時を経て再び巡り会えるお客さまに、大阪ステーションシティから感謝の気持ちと楽しい時間をお届けいたします。

公式HP:https://osakastationcity.com/twf2022/