「些細なことも大切にして、ポジティブに生きていきたい」
嶽本野ばらの同名小説を窪塚愛流と蒔田彩珠のW主演で映画化
映画『ハピネス』主演・窪塚愛流インタビュー
2022年に公開された『麻希のいる世界』や2023年の『少女は卒業しない』でヒロインの同級生役で輝きを放ち、ドラマ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」などでも注目を集める若手俳優・窪塚愛流。そんな窪塚が、5月17日(金)より、大阪ステーションシティシネマほか全国にて公開される『ハピネス』で、映画初主演を務めている。
『下妻物語』などで知られる嶽本野ばらの同名小説を、『月とキャベツ』や『影踏み』の篠原哲雄監督が映画化したラブストーリー。恋人の由茉から余命を告白され動揺しながらも寄り添い続ける高校生の雪夫と彼女の最期の7日間を描く。連続テレビ小説『おかえりモネ』の蒔田彩珠が窪塚愛流とともにW主演を務め、橋本愛、山崎まさよし、吉田羊らが共演。そんな本作の公開に合わせ、窪塚愛流が作品について語った。
──悲しくも心温かくなる作品でした。窪塚さんは脚本を読んでどのように感じられましたか。
脚本を読んで涙を流したのは初めてで、頭の中では悲しくて、寂しいという感情が渦巻いていましたが、心の中はポカポカしていて、読みながらよくわからない感情になっていました。だからこそ、この映画を観た人に、「悲しかったね」というひと言で終わってほしくなくて。ちゃんとこの映画の大切な部分を受け取ってほしいと思ったので、ハピネス(幸せ)とストーリーの悲しさ、どちらも大切にしたいと思って撮影に臨みました。
──脚本を読まれてから、初主演映画だとお聞きになられたんでしょうか。それとも、初主演映画ですと脚本を渡されたのでしょうか。
初主演映画ですと脚本を渡されました。
──初主演映画と聞いた時はどのように感じられましたか。
初主演という言葉に僕でいいんですか?と思いましたし、プレッシャーを感じました。それでも、『ハピネス』の脚本を読んで、こんなに素敵な作品を逃すのはもったいないと感じて、やりたいと思いました。
──雪夫は由茉を見守る役割でしたが、雪夫をどのように演じようと思いましたか。
完璧じゃなくてもいいので、雪夫のいいところを全面的に出したいと思いました。というのも、2人は、雪夫にないものを由茉が持っていて、由茉にないものを雪夫が持っている関係だからです。雪夫は確かに由茉を支えるという役柄ではありましたが、演じてみると、逆に由茉に支えられていたように感じました。
──由茉に支えられていたというのは?
蒔田さんがあのような芝居をしてくれたからこそ、僕は雪夫でいられました。実は、現場ではあまり蒔田さんとお話しなかったんです。お芝居に対しての必要なコミュニケーションだけで、蒔田さん自身のことを知らなかったからこそ、僕は蒔田さんのことを由茉として見ることができました。僕は蒔田さんに支えられて、雪夫ができたと思ってるので、感謝しています。
── 実際に、現場で雪夫と由茉として対峙した時はどのように感じられましたか。
想像以上というか。生身の人間として発する言葉の言いまわしや佇まいが、僕を安心させてくれたので、全てにおいて感謝しています。現場で僕は結構、追い込まれていたので。初めての主演というプレッシャーを感じていた僕を、いつもまっすぐな目で受け止めてくれていましたし、ミスすることがあっても優しく包んでくれました。
──篠原監督とは雪夫を演じるに当たってどんな話をされましたか。
監督とは毎シーン毎シーン話しながら作っていきました。あるシーンで、涙が止まらなくなってしまって、脚本にはなかったのですが、「涙を流していいですか」と聞きました。でも監督は、「涙をぐっとこらえて受け止めてあげるのが雪夫なんだ」とおっしゃったので、必死にこらえました。そんな風に監督と話しながら雪夫像を作っていきました。
──由茉の両親を、吉田羊さんと山崎まさよしさんが演じてらっしゃいました。彼女のお父さん、お母さんとして対峙されていかがでしたか。
親としての温もりを感じました。言葉もそうですが、2人が雪夫に触れてくれるシーンがあって。お母さん役の吉田羊さんに抱きしめられるシーンや、山崎さんから肩にポンと手を置かれるシーンで、おふたりの温もりを感じて泣いてしまいそうになりました。
──由茉のご両親の彼女への思いはスクリーンを通して伝わってくるものがありました。
それ以外でも、吉田羊さんとのシーンで台本に涙が溢れそうになると書いてあるところがあって。何回も泣けるかな?と不安を感じていたのですが、そういう心配も一瞬で忘れるぐらい温もりを感じていたので、何の問題もなく撮影することができました。僕もいずれは、言葉や仕草だけではなく、手の温もりだけで相手に気持ちを伝えらえる役者さんになりたいと思いました。
──由茉と家族のシーンなど、窪塚さんが見てらっしゃらないシーンもあったと思います。本作を観た時はどんな印象を持たれましたか。
家族って素敵だなと思いました。由茉ちゃんがいないシーンで、ご両親が彼女のために一生懸命行動しているところはすごく切ないですが、ジーンときました。雪夫もそうですが、みんな由茉のために行動していて、それが撮影中よりも映画の方が伝わってきて。同じことを思って芝居していたんだと感じて嬉しかったです。
──残り少ない時間を好きなことをして生きる由茉の姿を見て、窪塚さんはどのように感じられましたか。
いろんな人から「1日1日を大切にした方がいい」と聞いて、そうだよなと思いながらもぼーっと過ごしていた時もありましたが、今回、雪夫を演じて自分事として考えることができました。日々を大切にするのはもちろんですが、自分の気持ちに少しでも耳を傾けることが大切なんだと。今の僕にはどうしてもやりたいことはないですが、だからこそ些細なことも大切にして、ポジティブに生きていきたいと思いました。
──劇中、大阪でのデートで道頓堀に行くシーンがありました。窪塚さんは大阪に住んでいた頃、あの辺りに行くことはありましたか?
ご存じかと思いますが、僕は大阪育ちなので、よく行っていました。グリコの看板を見に行くわけではないですが、あの辺りでよく遊んでいました。
──では、本作の撮影は里帰りのような感覚だったのでしょうか。
そうですね。でも、撮影中は役に入っていたので、ひとりの観光客になった感覚でした。そんな時に友だちがたまたま通りかかって撮影を見ていたので、めっちゃ恥ずかしかったのを覚えています。
──大阪でよく行った場所や馴染みのある場所はありますか?
小学2年生の8歳ぐらいから、2年前の高校3年生まで大阪にいました。堀江周辺でよく遊んでいて、特に堀江公園が好きで、今でも友だちとご飯を食べた後、日向ぼっこをしに行くことがあります。
大阪ステーションシティシネマ支配人からのコメント
「主人公2人の物語は勿論ですが、限りある2人の時間を見届ける親の覚悟と、子ども達の背中を押す姿勢に胸が締め付けられます。主人公と同世代の皆さまは勿論ですが、是非親世代の方々にも親目線で観て欲しい作品です」
Movie Data
『ハピネス』
▼5月17日(金)より、大阪ステーションシティシネマほか全国にて公開
出演:窪塚愛流 蒔田彩珠
橋本愛 山崎まさよし 吉田羊
原作:嶽本野ばら「ハピネス」(⼩学館⽂庫刊)
監督:篠原哲雄
(C) 嶽本野ばら/⼩学館/「ハピネス」製作委員会
Profile
窪塚愛流
くぼづか・あいる●2003年10月3日、神奈川県生まれ。2018年、豊田利晃監督作『泣き虫しょったんの奇跡』でスクリーンデビュー。2021年から本格的に俳優活動を開始。ドラマ「ネメシス」(21)へのゲスト出演をはじめ、「あのときキスしておけば」(21)にもレギュラーキャストとして出演。その後、「この初恋はフィクションです」(21)、「ファイトソング」(22)、Huluオリジナル「神様のえこひいき」(22)、「ばかやろうのキス」(22)、「OTHELLO」(22)、「差出人は、誰ですか?」(22)、「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」(23)、「あたりのキッチン!」(23)などのドラマに出演。映画では、『麻希のいる世界』(22)、『少女は卒業しない』(23)、『劇場版 君と世界が終わる日に FINAL』(24)、『愛のゆくえ』(24)など。本作「ハピネス」が映画初主演となる。
いっちゃん、新しいやつ