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映画『ナイトフラワー』北川景子インタビュー

どない?

writer:華崎 陽子
photo:河上 良

『ミッドナイトスワン』の内田英治監督が、
子どもを育てるためドラッグの密売に手を染める母親を描く
『ナイトフラワー』主演・北川景子インタビュー

大河ドラマ「どうする家康」や、現在放送中のNHK連続テレビ小説「ばけばけ」、映画『スマホを落としただけなのに』や『ラーゲリより愛を込めて』など数多くのテレビドラマや映画に出演し、毎回異なる表情を見せながらも、その中にある凛とした美しさが印象的な北川景子。そんな北川が主演を務める『ナイトフラワー』が、11月28日(金)より、大阪ステーションシティシネマほか全国にて公開される。

夫の残した借金を抱えながら、大阪から逃げるようにやってきた東京でふたりの子どもを育てる母親が、孤独を抱えた女性格闘家をボディーガードに、ドラッグの密売に手を染めていく様を描く、『ミッドナイトスワン』の内田英治監督による人間ドラマだ。

そんな本作の公開に合わせ、明日食べるものにも困窮するような生活の中で2人の子どもを育てる、主人公の夏希を演じる北川が作品について語った。


──脚本を読まれた時はどのように感じられましたか。

読んだ後は、なんとも言えないと言いますか、どうにかしてあげることはできなかったのかな、という気持ちがすごく強く残りました。夏希は、元々極悪人だったから売人になったのではなく、子どもたちにとても愛情深く接して、子どもたちを育てるために、幸せにするために一生懸命身を粉にして働いています。夏希が苦しい状況の中でもユーモアを忘れず、温かい家庭を運営しようと頑張っているにも関わらず、どうしようもない状況に追い込まれて売人になってしまうことに複雑な思いを抱きました。

──夏希はすごく愛情深く子どもたちを育てています。

こういうことは、もしかしたら現実にあるのかもしれないとも思いましたし、何かひとつでも違えば夏希はこんな風にならなかったんじゃないかと、もやもやした気持ちにもなりました。例えば、頼れる親がいたり、福祉のようなものに頼れたり、何でも心置きなく話せる人がいたり、何か一つでも条件が違えば、夏希はここまでの状況にならずに済んだのではないかという、切なくて複雑な、なんとも言えない気持ちが残りました。

──もしかしたら、格闘家の多摩恵ともう少し早く出会っていれば違ったかもしれないですし、本当にちょっとしたことで変わったと思います。内田監督の脚本は、かといって夏希だけを正当化するのではなく、誰しもに厳しい目と温かい目を向けているのが魅力だと思います。

答えを全部提示するのではなくて、どう思いますか?と作品を通じて問われているというか、投げかけられているところが監督の作品の魅力だと思います。『ミッドナイトスワン』もそうでしたが、苦しい状況に置かれていながら光が当たらない人たちの境遇を描くのがすごく上手な監督だと思います。

──確かに、苦しい状況に置かれていながら光が当たらない人の境遇を描くというのは本作にも共通していますね。

夏希は、夫が借金を残して逃げてしまっていますが、それは全部夏希のせいなのかと聞かれたら、そうじゃないかもしれない。でも、夏希がドラッグの売人になってしまったことによって、田中麗奈さん演じるみゆきの娘さんは辛いことになってしまう。こちらが幸せを手にしていく一方で、向こうは辛い状況になるというところもきちんと描いて、リアリティを忘れないところが素晴らしいなと思います。

──そうですね。

私としても、映画を観終わった後に、みゆきは悪かったのかな?と考えたら、すごく共感できるところもあるんですよね。夫のことも一生懸命支えて、子どものことも、きっとひとりで背負って育ててきたと思うんです。なのに、娘がこういう結末を迎えてしまうのは、すごく不条理だなと思う一方で、人生はそんなものかもしれないとも思います。それをはっきりと嘘なく描くところが、この作品の魅力だと思います。

──夏希の子どもの小春を演じた、渡瀬結美さんとはどのようにコミュニケーションを取っていたのでしょうか。

クランクインの前に一度、芝居のリハーサルがありました。本読みと聞いていたんですが、途中からは本を置いて、体を動かしながら芝居を固めるというか、役柄をチューニングするというか、そういう作業になって。台本は関係なく、監督が「(渡瀬)結美ちゃんは、お母さんに宿題をやってなくて怒られてます。それに対して一生懸命言い返してください」と言って、エチュードをやったんです。

──渡瀬結美さんは演技が初めてだったとお聞きしましたが、すぐに対応できたのでしょうか。

結美ちゃんは最初、私にちょっと緊張してた気がするんですが、監督に「もっともっと。自分のお母さんにはもっと強い感じで言い返すでしょ。お母さんだと思って」と言われて、結美ちゃんの感情が出てきた瞬間があったので、そこで私たちは親子としてやっていけるという手応えがありました。

──そんな風に家族になっていったんですね。

結美ちゃんはしっかりしていて、いろんなことをお声がけしなくても大丈夫で、初めてのお芝居と思えませんでした。現場で過ごす時間がたくさんあったので、一緒に過ごす中で自然と家族になっていった感覚です。

──森田望智さん演じる多摩恵は、途中から夏希の家族と一緒にいる時間が増えていきます。監督は撮影の前に敢えて、北川さんと森田さんと会わせないようにしていたとお聞きしましたが、家族のような空気感は現場で徐々に生まれたものだったのでしょうか。

私たちが初めて会ったのが、夏希と多摩恵が初めて出会うシーンの撮影日だったので、そのシーンの段取りの前にご紹介いただいてご挨拶しました。私は事前にお会いせずに、初めましてでお芝居することに対して、そんなに抵抗がないというか、いつも通りの感覚でしたが、森田さんは少し緊張された状態でご挨拶してくださって。とても柔らかくて優しい、穏やかな雰囲気で「多摩恵をやります」とおっしゃったのが印象に残っています。私がテレビや他の作品で見ていた、穏やかで優しい森田さんだと思って、すごく安心しました。

──そうだったんですね。

でも、いざ段取りになると、歩き方やポケットのものを探る仕草が、急にワイルドになって。半年間格闘技を練習したとは聞いていましたが、すごく時間をかけて、この役になってここまで来られたんだと思って、すごく感動しましたし、役者としてもリスペクトの感情が生まれて、この人と一緒にやっていくんだと思って嬉しい気持ちになりました。

──そのように関係性を築かれた後で、格闘技の試合のシーンを体験すると、北川さんとしても夏希としても、胸に迫るものがありますよね。

「もうやめて!」という台詞もありましたが、本当にそう思いました。吹き替えなしに森田さんが全部やっているので、当てる振りであっても、床にぶつかると痛いと思うんです。たくさん生傷やあざを作って、この役のために身を削って、全力でぶつかってらっしゃったので、お芝居をしている感覚もなかったというか、一緒にいるシーンでは自然と間柄も深まっていきましたし、自然と家族になったという感覚でした。途中からは、お芝居とは思わなかったです。

──今は、朝ドラも撮影されているので、大阪に滞在する機会も増えていると思いますが、大阪に来て、大阪だなと感じるのは、どういう時でしょうか?

新大阪で新幹線を降りた瞬間から感じてます。大阪弁が飛び交ってるので(笑)。大阪では、私だと気づいてなくても、知らない方が普通に声をかけてきてくれるんですよね。「荷物引きずってるで」とか(笑)。お店の方も「東京からですか?どこからですか?仕事で?」って話しかけてくれて。タクシーでもNHKが行先だと告げると、「NHK行くって何しはんの?なんでNHK行かはんの?何の仕事?」って聞かれて、「撮影です」って返すと、「何?役者さん?」って(笑)。

──さすがに、タクシーの運転手さんは北川さんだと気づいているんですよね?

わかってなくてもそんな感じで話しかけられます。タクシーの運転手さんにここまで話しかけられるのは、やっぱり大阪だけですね。東京ではないです。ご飯を食べに行っても、店員さんが頼んでないのも持ってくるのも大阪だけですよね。「せっかく来たんやから、これも絶対食べな損やから」って言われて、「じゃあそれも頂きます」って食べる流れになるのも大阪だけですよね(笑)。

──大阪あるあるですね(笑)。

大阪の方の距離の近さや気さくな感じを実感すると帰ってきたなと思います。関西出身ではない人からすると、ちょっと戸惑う距離感ではあると思いますが(笑)、私はここで生まれ育っているので、嬉しいなというか、帰ってきたなと感じます。

──新幹線を降りた瞬間から感じてらっしゃるんですね。

降りた瞬間から全然違いますね。やっぱり大阪の人は声が大きいですよね。その声を聞くと、やっぱり元気やな、元気な街やなって(笑)。活気があっていいですよね。大阪が好きです。

大阪ステーションシティシネマ支配人からのコメント 

子供たちに良い思いをさせたい一心で、危険な道を選んでしまうシングルマザーの物語です。昼は優しい母親、夜はドラッグの売人という二重生活を送る中、裏社会に足を踏み入れてしまった事で待ち受ける過酷な運命に胸が締めつけられました。貧困問題や愛情の示し方など、非常に多くの事を考えさせられ、当たり前の幸せを大事にしていかねばと感じてしまいました。
本作は11/28(金)より、大阪ステーションシティシネマ他にて公開です。是非ご鑑賞ください。

Movie Data 

『ナイトフラワー』

▼11月28日(金)より、大阪ステーションシティシネマほか全国にて公開

出演:北川景子  森田望智  佐久間大介(Snow Man)  渋谷龍太 / 渋川清彦  池内博之 / 田中麗奈  光石研 
原案・脚本・監督:内田英治 
エンディングテーマ:角野隼斗「Spring Lullaby」(Sony Classical International)

©️2025「ナイトフラワー」製作委員会

Profile 

北川景子

きたがわ・けいこ●1986年生まれ、兵庫県出身。2003年、ドラマ「美少女戦士セーラームーン」で女優デビュー。以降、『パラダイス・キス』(11)、『抱きしめたい‐真実の物語‐』(14)、『君の膵臓をたべたい』(17)、『スマホを落としただけなのに』(18)、『約束のネバーランド』(20)、『ファーストラヴ』(21)、『ラーゲリより愛を込めて』(22)、大河ドラマ「どうする家康」(23)、「あなたを奪ったその日から」(25)など、数々の作品で主演・ヒロイン役を務める。NHK連続テレビ小説「ばけばけ」に出演中。公開待機作に『未来』(2026年5月公開予定)がある。

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