OSAKA STATION CITY GUIDE

do-ya?[ドーヤ?]

 映画『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』オダギリジョーインタビュー 

どない?

writer:華崎 陽子
photo:河上 良

 放映時に大きな話題を呼んだ伝説のドラマが満を持しての映画化 
映画『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』 
脚本・監督・編集・出演を務めたオダギリジョーインタビュー 

 日本映画界にとって欠かせない俳優であるだけでなく、プロデューサー、監督としても類まれな才能を発揮するオダギリジョー。そんなオダギリが脚本・監督・編集を務め、警察犬・オリバーとして出演する『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』が、大阪ステーションシティシネマほか全国にて上映中。 

2021年から2シーズン放送され、大きな話題を呼んだ伝説のドラマ「オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ」が満を持して映画化。警察犬係のハンドラー・一平が、なぜか犬の着ぐるみを着たおじさんにしか見えない相棒の警察犬・オリバー(一平以外の人間には優秀な警察犬に見えている)と、行方不明事件を捜査する様を描く。 

池松壮亮が主演を務め、オダギリジョー、麻生久美子、本田翼、岡山天音、黒木華、永瀬正敏、佐藤浩市、吉岡里帆、深津絵里らが共演する話題作だ。そんな本作の公開に合わせ、監督・脚本・編集を務め、警察犬・オリバーを演じたオダギリが作品について語った。 


 ──ドラマの放送時も大きな反響があったと思います。その反響についてオダギリさん自身はどのように感じてらっしゃったんでしょうか。 

皆が皆、見やすい、わかりやすい、喉越しのいいドラマを求めているわけじゃないですよね。自分もそうですが、もっとアートやカルチャーに興味がある方もいるわけで、いつものドラマに物足りなさを感じていた人たちに深く刺さったんだろうなと思います。そういう人が、日本にもたくさんいたということなんじゃないでしょうか。ここまで大きな反響をいただくとは思っていなかったので、すごく手応えを感じましたし、嬉しく思いました。 

──オダギリさんが着ぐるみを着て犬の格好をするというアイデアは、監督・脚本がオダギリさんじゃないと絶対に思いつかないと思います。仮に、そのアイデアがオダギリさんの元に届けられていたら、受けてらっしゃいましたか? 

正直なところ、脚本次第ですね(笑)。すごく面白いものであれば、もちろんお引き受けすると思いますが、「どうせ断られるだろう」とオファーしてくれないでしょうね(苦笑)。ただ、こういうタイプのコメディは難しいんですよ。 

──難しいと思います。 

着ぐるみの時点でベタな設定なのに、笑いの取り方までベタだと、もう見てられないじゃないですか?媚びた笑いにはしたくなかったし、品が無いって言うんですかね…。 

──わかります。 

そういうものになる可能性があるんだったら絶対受けないですね。30年近い経験から、面白くなるかどうかは脚本を読めばだいたい分かります。自分の人生の中の重要な時間を駄作に使いたくはないので、作品選びについては常に厳重に考えています。 

──本作に多々ある面白いシーンの中で、ドラマの第5話だったと思いますが、麻生久美子さんと池松壮亮さんが「え?」という言葉だけで応酬し合うシーンは、少し間違えると全く面白くなくなるシーンだと感じました。おふたりが真顔でやってるからこそ、すごく面白いと思いました。 

実は、あれは芝居の訓練方法のひとつなんです。学生の頃に学んでいた「メソッド」という方法論があって。それの練習法のひとつなんですよ。 

──そうだったんですね。 

ひとつの意味のない言葉をお互いに繰り返すんですが、その時に感じた感情だけはその言葉に乗せるんです。言葉のやり取り自体には意味はないんだけど、ちゃんと感情が乗っていれば、ふたりの間では感情のキャッチボールは成立するんですね。しっかりと自分の感情を言葉に乗せるための訓練なんですが、はっきり言って下手な俳優には出来ません。だからこそ、あの2人にやってもらったんです。 

──面白いシーンで言うと、永瀬正敏さんがオール阪神巨人さんの物真似をされたのも驚きました。 

永瀬さんは、意外とああいうの嫌いじゃないんです(笑)。ご自身で動画で調べて、家で練習してきてくれました。 

──本当ですか!?たぶん、誰も永瀬さんにあれをやってほしいとは言えないと思うんです。 

そうですね、確かに(笑)。 

──オダギリさんだから、永瀬さんもやってくださったと思うんです。ドラマの時の『濱マイク』のオマージュにしても。 

本当は永瀬さんもお笑いが好きというか、嫌いじゃない人なんですよ。 

──それは、おふたりの関係性の中で感じてらっしゃったんですね。 

そうですね。ドラマシリーズの段階から、そういうコメディ要素を好んでくださっていましたし、『濱マイク』のオマージュのシーンでは、当時使っていたホンモノのサングラスをわざわざ持参して下さって(笑)。そのくらい、面白い事には100%協力的な方なんです。 

──そんな永瀬さんも登場するChapter4は、たこ焼きがモチーフになっていました。丸いものは他にもたくさんある中で、なぜたこ焼きだったのでしょうか。 

自分がたこ焼き好きというのが大きな理由のひとつですが、実は、脚本執筆中にコロナにかかって高熱で寝ていたんです。その時にふと、「今とは全く違う価値観の世界に飛ばされたらどうなるんだろう?」と頭に浮かんだアイデアなんです。急に、たこ焼きが中心の世界になっていたら…どうしよう、と。 

──熱に浮かされながら(笑)。 

そうです(笑)。もしかしたら、死を間際に神からいただいた啓示なのかも知れません(苦笑)。 

──なるほど。すごく面白い世界だと思いました。絶対にありえない世界ですが、ああなったら面白いなと。 

大阪ではありえるかもしれないですね。 

──池松さんとオダギリさんは、『アジアの天使』で共演されていましたが、池松さんが監督作で主演を務めてらっしゃるのは、オダギリさんの中で池松さんに対して揺らがない信頼感があったからでしょうか。 

もちろん、そうですね。池松くんとは、ちょっと似ている部分を感じるというか。作品に対してちゃんと誠意を持って向かい合ってくれるので、大切な役を任せられるんです。池松くんの凄さをひとつ挙げるとしたら…、現場に携帯を持って来ないんですよ。 

──今の時代、なかなかいらっしゃらないですよね。 

『アジアの天使』の現場を一緒に過ごしている中で、1回ぐらいしか携帯を触っている姿を見ていなくて。自分より一回りぐらい下なのに携帯を触らない…、まずそこに驚いたんです。もちろん台本も現場に持ち込まないし、待ち時間はスタッフと話しながら過ごしている姿に、昭和の役者がまだ残ってるように感じて。僕らの下の世代になると、現場にゲームを持ち込む俳優もいますからね(苦笑)。池松くんから、今はなき俳優の気概を感じて、驚かされたんです。 

──そう考えると、映画もドラマも柄本明さんや佐藤浩市さんなど、昭和を感じる役者さんが多く出演されていますが、中でも宇野祥平さんの美しさには驚きました。 

宇野さんは若い頃から同じ現場を過ごした仲間ですが、良くも悪くもいじられ尽くしたんですよ。中には雑ないじられ方をしているものもあって、他人事ながら、腹立たしく見ていたんです。TVシリーズの時に、「オダギリ組は宇野さんを雑に扱うことは決してありません」という意味を込めて、本気で宇野さんを綺麗にしようとしたんです。 

メイクチーム、衣装チームと相談して、宇野さんを一番キレイに見せる方法を考え尽くしました。宇野さんにもパックを渡して、毎日のスキンケアをお願いしました(笑)。もちろん照明やカメラ位置も工夫しながら、編集でも綺麗に見えるような加工を施して、一番綺麗な宇野さんを引き出しました。あれは、オダギリ組全体でベストを尽くした結果だと胸を張れますね。 

──今回も。 

今回もすごく綺麗でしょ?(笑)。要は、宇野さんをとことん綺麗にする事だって、笑いになるんですよ。雑に扱って、品のない笑いを作るのは簡単ですが、そういう笑いは「オリバー」の世界には入れたくないんです。劇場版を見たお客さんがSNSで、宇野さんがある女優さんに似てる…と書いてあって。確かに似てるし、みんなが幸せに感じられる良い笑いになりましたね。 

──深津絵里さんは、オープニングから観客の視線をさらうと思いますが、本作へのオファーは『カムカムエヴリバディ』で深津さんと共演されたのがきっかけだったのでしょうか。 

そうですね。本当に素晴らしいですよね。そもそも『カムカムエヴリバディ』は、深津さんと芝居を交わしてみたいという理由でお引き受けしたんです。 

──そうだったんですね。 

朝ドラなんて大メジャーじゃないですか(苦笑)。自分には似合わないし、一生関わらないだろうと思っていたのですが、相手が深津さんだと聞き、グラついちゃいました(苦笑)。共演してみて、深津さんの凄さを何度も横で見ることが出来ましたし、話してみると面白い人なんです。たぶん人見知りで、あまり自分から話しかけてこられない方なので、こちらから話しかけてみると、すごく面白い感性をお持ちの方で。 

──何か通じるものを感じられたのでしょうか。 

意外に思われるかも知れませんが、似ている部分は感じますね。かっこいいと思うもの、苦手に感じるもの、そういう価値観が似ているように思います。話していて楽しいですね。「オリバー」に関しては深津さんが引き受けてくれるかは分かりませんでしたが、きっと受けてくれるはずと信じて、最初から深津さんをイメージして当て書きしました。 

──『カムカムエヴリバディ』の撮影は大阪で行われていたと思いますが、大阪で特に思い出に残ってる場所や、印象に残ってることはありますでしょうか。 

大阪では、NHKがある駅の隣の駅にあるホテルで暮らしていたので、時間に余裕があるときは電車で通ったり、歩いて帰ったりしていたんです。1駅の距離なんですが、それがすごく楽しくて。人生で初めてICカード乗車券を買ったんです。 

──ICOCAを。 

Suicaは持ってないのに、ICOCAは持ってるんですよ(笑)。バカみたいな話ですが、ICカードで改札を通るのが楽しかったり、お金をチャージすることにワクワクしたり、そういう何気ないことがすごく楽しかったです。ちょうど、オリバーのシーズン2の脚本を書いていた時期だったので、ネタを考えながら大阪らしい街の景色を見たり、川を渡ったりしてましたね。 

──大阪での滞在を楽しんでくださってたんですね。 

そうですね。やっぱり好きなんですよね。従兄弟が神戸に住んでいて、神戸は昔からよく訪れていましたし、関西圏には思い入れがあるというか。大阪の食べ物も大好きですね。 

──オダギリさんは岡山出身なので、距離的にも近いですから。 

同級生も進学や就職となると大阪に出る方が多くて、東京に出るなんて、まるで海を渡るような感覚でしたね。 

──本作もそうですし、ドラマを観ていても、オダギリさんは関西のお笑いがお好きなんじゃないかと思ってました。 

岡山がラッキーだったのは、関西ローカルの番組も東京ローカルの番組も見れるんです。だから、深夜番組が充実してて。その中でも僕は、「クイズ!紳助くん」など関西ローカルの番組が好きだったので、関西のお笑いの方が肌に合うというか、自分のDNAに刻まれているんだと思います。次長課長の河本くんは小学校の幼馴染ですし、超新塾という5人組の内の2人は中学の時の友達です。幼馴染から3人も芸人になるなんて、確かにちょっと変な街なのかも知れませんね(笑)。 

──この後というか、続編については考えてらっしゃるのでしょうか。 

映画って途方もないお金がかかるものなんですよね。実はオリバーもこだわりすぎて既に予算をオーバーしてるので、もし動員が悪く赤字で終わった場合、自分は2度と映画を撮らせてもらえないと覚悟しています。 

──では、絶対にお客さんに入ってもらわないといけないですね。 

入ってくれると嬉しいですが、そればっかりはどうしようもない部分もあるので。もしもヒットしたら(続編を)作るかもしれない…ということでしょうね。 

──構想はある、と。 

構想はもちろん、ありますね。 

大阪ステーションシティシネマ支配人からのコメント 

2021年にNHKで放映されたドラマ版のカルト的人気を背景に、豪華キャストとオダギリ独特のシュールな演出がクセになる、所謂「ぶっとんでいる」怪作です。 
私も常々実家の愛犬が人間だったらと妄想してしまっておりましたが、このオダギリジョーさんのクセ強なシェパードを観てしまうと、色々と考えを改めてしまいました。 

ドラマ版未視聴でも充分楽しめますが、予習をして映画版に臨むと楽しさ倍々です。 
ぜひ大阪ステーションシティシネマでご鑑賞ください! 

Movie Data 

『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』 

▼大阪ステーションシティシネマほか全国にて上映中 

出演:池松壮亮、麻生久美子、本田翼、岡山天音、黒木華、鈴木慶一 
永瀬正敏、 
佐藤浩市、
 嶋田久作、宇野祥平、香椎由宇 吉岡里帆、鹿賀丈史、森川葵、髙嶋政宏、菊地姫奈、平井まさあき(男性ブランコ)
 深津絵里 
脚本・監督・編集・出演:オダギリジョー 

(C) 2025「THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE」製作委員会 

Profile 

オダギリジョー 

●1976年2月16日、岡山県生まれ。アメリカと日本で演技を学び、2003年、カンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出された『アカルイミライ』で映画初主演を果たす。以降、『メゾン・ド・ヒミコ』(05)や『ゆれる』(06)など、作家性や芸術性を重視した作品選びで唯一無二のスタイルを確立。『悲夢』(09)、『マイウェイ 12,000キロの真実』(12)、『宵闇真珠』(18)、『サタデー・フィクション』(23)など、海外の映画人からの信頼も厚い。初長編監督作『ある船頭の話』(19)は、第76回ヴェネツィア国際映画祭ヴェニス・デイズ部門に日本映画史上初めて選出。今年公開された『夏の砂の上』では主演・共同プロデューサーを務める。脚本・演出・出演・編集をこなしたNHKドラマ「オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ」はカルト的な人気を博し、東京ドラマアウォード2022単発ドラマ部門でグランプリを受賞した。公開待機作に『兄を持ち運べるサイズに』(11月28日公開)がある。 

大阪・梅田で知っといたら得するで!特集

まだ行ってへんの?うめきた新エリア特集

ひとりでも多人数でも!梅田ではしご酒特集

0円で利用できる!大阪・梅田のパブリックスペース特集