photo:河上 良
戦後沖縄を舞台にした真藤順丈による同名小説を大友啓史監督が映画化した『宝島』妻夫木聡&窪田正孝&大友啓史監督インタビュー
日本映画界を代表する俳優・妻夫木聡が主演を務め、極限までそぎ落とした演技が印象的な窪田正孝が出演、「龍馬伝」や『るろうに剣心』シリーズの大友啓史監督がメガホンをとった『宝島』が、9月19日(金)より、大阪ステーションシティシネマほか全国にて公開される。
真藤順丈による同名小説を基に、アメリカに支配された戦後の沖縄で、混沌とした時代を全力で駆け抜けた“戦果アギヤー”と呼ばれる若者たちの20年を壮大なスケールで描く。主演に妻夫木聡を迎え、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太ら日本映画界を牽引する豪華俳優陣が集結した話題作だ。
そんな本作の公開に合わせ、主人公のグスクを演じる妻夫木、グスクの幼馴染のレイを演じる窪田、そして大友啓史監督が作品について語った。
──原作を読んだ時も映画を拝見した時も、どちらも熱を浴びるような感覚になりました。
まずは、原作を映画化するにあたって一番大事にしたことを教えていただけますでしょうか。
大友監督:アメリカ統治下の沖縄の話というのは意外と知らないことが多いんですよね。何が起こって、沖縄の人たちがどういう感情で生きていたのか。この原作を読むと、いろんな不条理や我々が想像できなかったようなことはもちろん、反骨心やそれでも生きていくという諦めない姿勢が描かれていました。
──そうですね。
大友監督:沖縄の人たちは優しくて穏やかだと思われていますが、ああいう時代を潜り抜けてきているからこそ反骨心が強いんです。そういう負けない、折れない気持ちが物語の中にすごく溢れているので、原作に込められている熱量をそのまま映像化したいと思いました。

──妻夫木さんは、本作のオファーを受けてどのように思われたのでしょうか。
妻夫木聡(以下、妻夫木):嬉しかったですね。『涙そうそう』という映画も『宝島』と同じく、コザを舞台にした作品だったので、その時からずっと仲良くしてる親友もたくさんいて。僕にとっては改めて沖縄と向き合うきっかけにもなったので、本当に嬉しかったですし、運命的なものを感じました。同じ街を舞台にした映画にオファーしていただくことはなかなかないことですから。
──そうですね。『涙そうそう』からは約20年経ってますが、グスクは20年経った今だからこそ演じられる役だったのではないでしょうか。
妻夫木:それはタイミングというか、運でしかないと思います。監督が原作を手にとって僕を思い描いてくださったのは縁でしかないと思うので。監督の想いはわかりませんが、きっと『涙そうそう』のことは関係なく、グスク役を僕にということだったと思うんですが、そう思ってくださったことが僕にとっては奇跡的なことなので。本当にありがたいことだと感じています。
──窪田さんは、原作を読んで、また本作のオファーを受けてどのように感じられましたか。
窪田正孝(以下、窪田):基本的にあまり原作は読まないようにしているので、原作は拝読してないんです。自分たち役者にとっては台本が全てなので、原作のどこを抽出しているかは知らない方がいいと思って、あえて読まないようにしています。
──なるほど。
窪田:この作品は、企画書の段階からすごく熱量があると感じました。それこそ、たぎるようなメッセージというか。台本を読んだ時は、どこまで映像化するんだろう、どういう風に具現化させるんだろうと思いましたが、大友さんだからすごいところまでやっちゃうんだろうなと思いました(笑)。
妻夫木:文字で書くと簡単なんですけどね。
窪田:本当にそうなんですよね。ゲートが…、とか、嘉手納基地が…ってすごいことが書いてあるけど、どうなるんだろう、と。自分は役者ではありますが、どういう風に監督が具現化されるのかというのは一人の参加者として、すごく楽しみにしていました。

──妻夫木さんと窪田さんは、実際に共演してみられて、お互いにどのように感じられましたか。
妻夫木:実は共演して、ちゃんとお芝居するのは初めてで。
窪田:初めてでしたね。
妻夫木:『ある男』の時は同じ作品には出ていましたが、共演はほとんどなくて。プライベートで会う機会は多かったので、「共演できたらいいね」と言っていましたが、こんなに早く共演できるとは思ってなかったです。窪田くんは芝居に対して真摯な人だと思います。
窪田:(恐縮しながら)いやいやいやいや。
妻夫木:悪く言うと役者バカかな(笑)。目の前のことしか見えなくなっちゃう人だから、僕はそこが信用できるんです。レイは難しい役だと思いますが、窪田くんが本当にレイになっていたら、ここまでやるだろうなというところまでやってくれるからこそ、レイという存在に説得力が生まれていたんだと思います。レイの痛みや悲しみ、苦しみも全て表現してくれていました。
──わかる気がします。
妻夫木:だからこそ、最後の嘉手納基地でグスクとレイが対峙するシーンは、台本を読んでいくら想像してもしきれなかった芝居になったと思います。あの時は、レイとの歴史が見えた瞬間があったんです。まるで走馬灯のように、僕が経験してないレイとの人生まで見えたような気がして。それは、レイを演じたのが窪田くんだったからだと思います。
窪田:ありがとうございます。
──窪田さんはいかがですか。
窪田:もちろん役者の大先輩ではあるんですが、それ以前に、妻夫木さんはスタッフさんでも役者さんでもエキストラさんでも関係なく、誰に対してもすごく興味を持って真摯に境界線なく接する方だと思うんです。そういう妻夫木さんの人柄がグスクにも反映されているように感じました。妻夫木さんが主演として大事な柱を担ってくれていて、そこに皆が自然と集まっていくという前提がある上での『宝島』なので、妻夫木さんじゃないと『宝島』を実現できなかったと思います。

──確かに、グスクと妻夫木さんが重なる部分があるように感じました。
窪田:妻夫木さんは根本的に人から愛される人なので。だから、グスクのように周りに人がいて、人を大切にして、辛い時は誰か支えてくれる人がいて、逆の立場であってもそうで。役者としてもそうですし人間としても、そういう妻夫木さんの根幹が伝わってきました。自分は全力で挑むことしかできなかったので、それを監督が絞り出してくれて、ああいう2人のシーンになったんだと思います。
──一番印象に残ってるシーンをあげるとするとどこになりますでしょうか?
妻夫木:先ほど例に挙げた、レイと嘉手納基地で思いをぶつけ合うシーンですね。台本に書かかれていることだけではない何かが生まれたと思います。窪田くんがレイをやってくれたことで、グスクとしての世界が広がったように感じました。お芝居の最中にグスクとレイの歴史が走馬灯のように見えたと言いましたが、それは台本に書いてなかったことだし、お芝居は生き物なんだと改めて感じた瞬間でした。それは窪田くんとだったからできたことです。
窪田:自分も同じシーンですね。いろんな方に愛されている妻夫木さんの土台がグスクに反映されていたからこそ、グスクが沖縄のことを思ってる気持ちを、妻夫木さんを通じて感じることができました。だから僕も全力でぶつかるしかなかったし、ここで泣こうとか大声で叫ぼうとかそういう余裕もなくて。あのシーンは妻夫木さんとじゃなければできませんでした。大友組はそういう現場なので、出来上がった映像を観て「こんなことやったっけ?」と覚えてないこともあって。あのシーンは、現場で生き物のように変わっていったシーンでした。
──本作を通して、監督はどのようなことを感じられましたか。
大友監督:今の世の中において、何を大切にして生きていくのかということに対するヒントが、あの時代の沖縄にあるように感じました。あの時代の沖縄の皆さんが何を守ろうとしていたのか、尊厳を踏みにじられ、守ってくれる人もいない中で、何を守ろうとしていたのか知ることは、今の時代に大切なことだと思うんです。
──なるほど。
大友監督:この映画を通して、あの時代の沖縄にどっぷり入り込んで、あの時代を追体験していただいて、グスクやレイや(広瀬すず演じる)ヤマコと一緒に生きてもらって、消えてしまったオンの背中を感じながら生きてもらって、何かを感じとってもらいたいですね。『宝島』というタイトルですが、「宝」とは何なのか考えていただくことが、あの時代を懸命に生きた沖縄の先人たちに対する礼だと感じています。この映画で、沖縄の方の気持ちを皆さんに伝える役目を果たすことができたら我々も嬉しいです。

大阪ステーションシティシネマ支配人からのコメント
米軍統治下の沖縄を舞台にした圧巻のストーリーに加え、妻夫木聡さんを始めとする出演者の皆さんの熱演が魂を揺さぶります。
沖縄の戦後史と人間ドラマが融合し、「正義とは何か」「歴史をどう受け止めるか」などを考えさせられました。
沖縄の痛みと希望の物語を、是非大阪ステーションシティシネマでご鑑賞ください。
Movie Data
『宝島』
9月19日(金)より、大阪ステーションシティシネマほか全国にて公開




出演:妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太
塚本晋也、中村蒼、瀧内公美、栄莉弥、尚玄、ピエール瀧、木幡竜、奥野瑛太、村田秀亮、デリック・ドーバー
監督:大友啓史
原作:真藤順丈『宝島』(講談社文庫)
(C) 真藤順丈/講談社 (C) 2025「宝島」製作委員会

Profile
妻夫木聡
つまぶき・さとし●1980年、福岡県出身。1998年に俳優デビューし、2001年に映画『ウォーターボーイズ』でブレイク。2009年のNHK大河ドラマ『天地人』など、数多くの映像作品や舞台で主演を務める。2010年に『悪人』、2022年に『ある男』で、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。NHK連続テレビ小説『あんぱん』に出演中。
窪田正孝
くぼた・まさたか●1988年神奈川県出身。近年の主な出演作に、映画『本心』『悪い夏』『愛にイナズマ』、ドラマ『宙わたる教室』など。2022年に映画『ある男』で、日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。2025年10月~11月に、主演舞台『チ。-地球の運動について-』が全国5ヶ所で上演される予定。
大友啓史
おおとも・けいし●1966年、岩手県生まれ。1990年にNHKに入局し、連続テレビ小説「ちゅらさん」シリーズ(01~04)、「ハゲタカ」(07)、「白洲次郎」(09)、NHK大河ドラマ「龍馬伝」(10)などを演出。イタリア賞はじめ国内外の賞を多数受賞する。2009年、『ハゲタカ』で映画監督デビュー。2011年に独立し、『るろうに剣心』(12)、『プラチナデータ』(13)、『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』(14)、『秘密 THE TOP SECRET』『ミュージアム』(16)、『3月のライオン』2部作(17)、『億男』(18)、『影裏』(20)など話題作・ヒット作を次々と世に送り出す。『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』(21)では、2部作合わせて70億円、シリーズ累計200億円に迫る大ヒットを記録。東映創立70周年記念作品の『レジェンド&バタフライ』(23)では、20億円を超える興行収入を記録した。
大阪ステーションシティシネマで『宝島』を観た後は、こちらのカフェや休憩エリアで映画談議に花を咲かせてみては?
■<大丸梅田店>6F フレッシュケーキ&カフェハーブス
■<ルクア>7F WIRED CAFE
■<KITTE大阪>2F 京今日/KYOTO あのん CAFE
■<大阪ステーションシティ>5F 時空(とき)の広場
■<ノースゲートビルディング>11F 風の広場
■<サウスゲートビルディング>1F 旅立ちの広場
いっちゃん、新しいやつ