猪原秀陽（いのはら・ひではる）さん

埼玉県生まれ。漫画家。主にインターネット上で活動しています。「We`re バッド・アニマルズ」(ビームコミックス)発売中です。

１.冷やし中華がない世界は…

我々の世界線には、冷やし中華がある。
ありがとう、冷やし中華。ほっと一息。暑い夏を満喫できるよ。

２.冷やし中華があってよかった～色々な冷やし中華～

３.もっと冷やし中華をちょうだい！

1977年の45年前、冷やし中華を愛しすぎたあまりに『全日本冷やし中華愛好会』を作ったひとたちがいたそうだ。

なんと、冷やし中華を愛しすぎたあまりに夏だけでは満足できず、冬にも冷やし中華を食べたいという想いを込めた会が誕生したそうだ。会員数は当時1000名ほど。『空飛ぶ冷やし中華』は、その冷やし中華愛好会の歴史を収録した１冊である。

たとえばグにしても、“ハム派”“チャーシュー派”から“魚肉ソーセージ派”までいる。僕は“牛のタン派”で再少数派なんです。そうかと思ったら、シルを“タレ”と見るか“スープ”と見るかで激論を闘わす。“タレ派”はシルを飲んではいけないという。（p.85）

読み進めると、冷やし中華の具はもちろん、冷やし中華をいただくときの箸使いまで激論され、しかも“冷やし中華思想”という名の研究までもある。『冷やし中華食卓空間の構造』『冷やし中華宇宙論』などの文字まで並んでいる。我々が想像する冷やし中華の粋を超え、あるようなないような冷やし中華にまつわる議論を展開したそうだ。

「右からかきまわすべきか、左からかきまわすべきか？またかきまわすにしてもはたして焼豚（またはハム）の位置からか、はたまた小宇宙の核にあたるウズラの卵からか、モヤシからか」と惑い続け、ようやく「かきまぜて一見混沌としたカオスをつくり出しながら口に運ぶのが本道である」ことを発見している。（p.168）

食べ方のマナーを重視する教条派や冷やし中華による幽体離脱をはかる神秘派が軸にあったが、次々と新論文が出され新しい派がでてきたという。（バビロニア派、天文学派、ブラックホール派、おにぎり派、武道派など…）。

本の中では、冷やし中華を“呼び名は異なるが、味は全国だいたい同じ。”であることに、山下会長は触れている。

名前はデタラメだけど、出てくるものはだいたい同じなんだ。これが何を意味するか。文化人類学的見地でみると、同じものが伝わってるんだけど、方々で勝手な名前で呼んでいるんだ。つまり共同体的なもので育ってきた料理ではないと思う。うどんやそばなんか、北や南じゃ汁の味が全然違うじゃない。ところが冷やし中華はどこへ行ったって同じ、全くの根なし草なんだ。（p.249）

どこへいっても同じであるということは、距離が離れていても、同じ“おいしい”や“味”を共有できるということ。冷やし中華愛好会が生まれ、全国でさまざまな議論がなされた理由がわかる気がした。

私たちの世界に、冷やし中華があってよかった。

４.ここで、食べられる！店舗のご紹介。

冷やし中華が食べたい！と思ったあなた。
大阪ステーションシティで冷やし中華を食べられるお店はここ！と言いたいところですが、実は冷麺が食べられるお店が盛りだくさんです。
大阪ステーションシティ内の飲食テナントで、冷やし中華や冷麺を販売するお店を紹介します。

※ 商品や料金などの掲載情報は、2022年8月時点でのデータをもとにしています。現在とは販売状況が異なる場合があります。

編集後記
「冷やし中華」と「冷麺」は違うものです。
ところが、「冷やし中華を関西では冷麺という」と記載する辞書もあります。「冷やし中華」と呼ぶか「冷麺」と呼ぶか…
冷やし中華に関する議論はまだまだ尽きません。